毎週火曜日、好評連載中の「タケ小山のゴルフ即効薬~今週の処方箋」。今週は久々の特別編です。今週の日本シリーズJTカップでシーズンを終える日本の男子ツアーに喝! 起死回生の手段を伝授しましょう。


■賞金を半額に、試合数を倍に

石川遼、松山英樹に頼るばかりじゃダメ!
石川遼、松山英樹に頼るばかりじゃダメ!

 年間27試合、うち2試合は国外での共催。これが日本男子ツアーの現状です(2017年実績)。スケジュールは歯抜けで、ファンもツアーとして続けて応援する気になりにくい。ああ、寂しい。

 フロリダでゴルフ漬けになっていた僕が、日本に戻ってきた07年は、ちょうど、15歳の高校1年生・石川遼選手がツアーで優勝し、注目を集めた年でした。石川効果でゴルファー以外も会場に足を運んでいました。

 ところが、この機会はまったく生かされなかった。10年がたった今、状況はほとんど変わっていません。松山英樹というスターも出現したというのに。一体、なぜでしょうか?

 理由は簡単。ツアーに根本的なビジョンが全くないからです。広告代理店任せの旧態依然としたビジネスモデルをかたくなに続け、10年後、20年後にツアーをどうしたいのかというビジョンが全くない。目先のことだけに振り回され続けた結果が、この体たらくなのです。石川、松山の2枚看板に頼るばかりで彼らが米ツアーに行くとお手上げなのではどうにもなりません。

 ツアーには、役者がたくさんそろっています。この役者たちを使った“ステージ”を数多く作り、そこに観客を呼ぶというプロスポーツの原点に返ること。これがツアーのするべきことです。賞金も開催費用も、大きなスポンサーに頼りきりでなく、コースに足を運んでくれるファンを増やし、コツコツと興行収入を得ていく。これを考えない限り、将来はありません。

 賞金総額を半分にして、試合数を倍にする大ナタを振るうべきです。こうすれば、選手には活躍の場が増えるし、スターが登場するチャンスも増えるし、ファンが試合を見る機会も増える。興行収入で試合ができるようになれば、スポンサー事情に振り回されることもない。たとえスポンサーが降りて賞金額が下がっても、試合を続けることはできるからです。


■選手はSNSでファン獲得を

ゴルフがうまければいいという時代ではないのだ
ゴルフがうまければいいという時代ではないのだ

 選手たちにも努力は必要です。ファンを増やす努力をすること。そのためには自ら発信する必要があります。ロリー・マキロイ(英国)やセルヒオ・ガルシア(スペイン)らが米国出身でないのに米ツアーでアウェー感なくプレーしているのは、SNSでファンにとって身近な存在になっているからです。残念ながら日本の上位選手でSNSを使っている選手は非常に少ない。本人でなくても、周辺スタッフがアップデートするだけでも効果はあるものです。

 プロゴルファーは、ただ球を打っていればいい、ゴルフがうまければいいという時代ではありません。ショービジネスの役者の1人として、自分をブランディングし、ファンを獲得することが大切だという自覚を持つべきです。メジャータイトルを手にするためにも、大事なことです。自分のファンが1人でも多くいれば、アウェーになりにくいからです。

 ツアーも選手も、もっと広い視野でビジョンをしっかり持って欲しい。そうすれば、日本男子ツアーにも明るい未来が見えてくるはずです。何なら僕がお手伝い、いやイニシアチブを取ってもいいですよ!


 ◆タケ小山(こやま)本名・小山武明。1964年(昭39)7月7日、東京都生まれ。中大卒業後、プロゴルファーを目指して89年に渡米し、フロリダ州のゴルフ場所属プロとなる。米、カナダ、オーストラリア、アジアなどのツアーでプレー。07年に帰国し、日本ツアーに参戦。08年に早大大学院でスポーツマネジメントを学ぶ。ザ・ゴルフチャンネル、ゴルフネットワークなどでのトーナメント解説には定評がある。TBS系「サンデーモーニング」の「屋根裏のプロゴルファー」として知られる。InterFMの「Green Jacket」(土曜午前5~8時)、文化放送の「The News Masters TOKYO」(月~金曜午前7~9時)などに出演。


◆協力 ザ・インペリアルCC(茨城県稲敷市)

◆取材・構成 遠藤淳子(清流舎)

◆撮影 山崎安昭