大林奈央(兵庫・相生学院高3年)が、冷静に、鮮やかに、逆転劇を演じた。

 3打差でサソウ(フィリピン)を追いかけ、前半で1打差に詰め寄った後、10番でバーディーを奪って、ボギーにしたサソウを逆転。畑岡奈紗の連覇に続く日本勢3連覇を達成した。

 15-18歳の部の日本選手団全員が待つ18番グリーン。いつものように、ひょうひょうと、表情を変えずに「世界一」のホールアウトをした大林に、チームメートは用意したペットボトルの水を一斉にかけて祝福した。

 「うれしいんですけど…優勝なんて全く(頭に)なかったので、ただただびっくりしてしまって」が第一声。笑みものぞくが、どことなくひきつった表情なのは、言葉通り、予期せぬ出来事だったのかもしれない。

 とにかくパットが入りまくった。1打差に迫った9番。サソウは2・5メートルのバーディーチャンスにつけたが、大林は5メートルのパーパットを残した。このパットをあっさりと決め、サソウが外して差が開かなかったのが、後半の逆転劇につながった。

 「最近の試合で、トップに立っても最終日のバック9で失敗してばかりいたんで、不安というか、回るのが怖かった」という。10番、8メートルのバーディーパットを決めると、バンカーショットをミスしたサソウは1・5メートルのパーパットが残していたが、大林の後に打って外した。これで大林12アンダー、サソウ11アンダー。1ホールでひっくり返す。続く11番では2・5メートルを決めて連続バーディーで突き放した。

 「きょうはあそこが一番でした」というのが、豪快な打ち下ろしの名物ホール15番パー3。風に流されて左の土手を転がり落ちた。「ラフが深くて」とアプローチを打ち過ぎてピンを10メートルオーバーした。「焦ったらあかんと思いました。2打差あったんで」と気持ちを冷静に保って打ったパットが決まってパーセーブ。このホールなど大事なロングパットが次々と決まり、「今日はパットが来ている日だと思いました」と、自分でも「予感」があった。

 「米国に来たのも、米国でゴルフをするのも、世界ジュニアに出るのも、全部初づくし。コースが合っていたんだと思います。何より、グリーンが合っていた。4日間で3パットが1回もなかった」と振り返った。

 ドライバーの飛距離は240~250ヤードと飛ぶ方ではない。目指しているのは「無駄のないゴルフ」。フェアウエーに置くことを最大のポイントにし、コースマネジメントをしっかりとする。距離は短いが、グリーンを含めて全体にアンジュレーションのあるコースを、巧みに落としどころを考えて攻めていった。「今までで一番無駄のないゴルフをできました」と笑った。

 通信制高校の3年生。進路を聞くと「正直、プロで活躍するというのではなく、プロを支える方に興味があります」という。日本代表になり、代表合宿に参加した時に、日本選手団団長でプロゴルファーの井上透・国際ジュニアゴルフ協会代表理事の講習を聞き「測定の分析とか、日本と米国のスイング違いとか、そうした話を聞いて、自分はこういうことがやりたいんじゃないかと思いました」という。ただ「最前線を知らないと支える側になれないと思う。その近道がプロだと思います」と、プロ入り志望も、将来を見据えたステップととらえている。

 大きな大会での優勝は初めて。井上団長は「畑岡奈紗が初優勝した時のような感じがした。新しいタイプの選手が出てきた。とにかく、マネジメントがしっかりしている」と評価した。