昨季賞金王の池田勇太(31=フリー)が、死闘を制して3年ぶり2度目の「日本一」に輝いた。5打差首位から出たが2度のOBもあり、東北福祉大の後輩でアマチュアの金谷拓実(19)との勝負は最終18番までもつれる大熱戦。3バーディー、3ボギー、1ダブルボギーの72と苦しみながら、通算8アンダーの272と1打差で逃げ切った。今季3勝目、ツアー通算19勝目。2位の金谷は、あと1歩で90年ぶりのアマ優勝を逃した。

 これほど苦しむとは思ってもいなかった。1打差で迎えた最終18番。池田は長いパットを10センチに寄せ、やっと勝利を確信した。感極まるが、涙はこらえる。圧倒的優位と思われた金谷との一騎打ちで、最後はともにパー。かろうじて逃げ切った。14年の初優勝から4年連続の最終日最終組。百戦錬磨の男でさえ、冷静ではなかった。緊張で心が震え、手まで震えた。

 「昨日の夜に、みんなが『優勝おめでとう』と送ってきた。重圧はあったよね。アマチュアには負けちゃいけなかった。時代はいつか変わるかも知れないけれど、それが俺のプライド」

 悪夢にうなされた。前日の第3日に一時は2位に7打差をつけながら、終盤3ホールで2ボギーと乱れた。自分への怒りを抑えきれないまま、布団をかぶった。「本当に悔しくてね。夢で2回見たよ」。勝つ夢ではない。崩れる夢だった。それは現実になる。3番で第1打をOBとしてダブルボギーをたたくなど、前半だけで2度も1打差に迫られた。12番で3打差に離しても、15番で再びOBで3度目の1打差。18番は不安の残るドライバーを思い切り振ってフェアウエーへ。丁寧に刻んだ金谷を、プロの誇りでかわした。

 「俺はプロとして商売をしている。彼はアイアンで刻んだ。その考えがアマチュア。金を払って見に来てくれる観客に、ドライバーを握って『これがプロ』という姿を見せたかった」

 史上17人目の複数回優勝を達成し、賞金ランクも3位に浮上した。「もう今日のミスは夢には見ない。今夜は夢を見ないほど飲むから」。

 豪快なようで繊細。喜びより脱力感が大きく「早くビールが飲みたい」とつぶやいた。【益子浩一】