木下裕太(32=フリー)がH・W・リュー(36=韓国)に6アンド5で完勝し、8強入りした。

スタートから3ホール連続で取り、昨年大会2位のマッチプレー巧者を圧倒。1ホールも失うことなく、13番パー5はチップインイーグルで勝負を決めた。

「自分はメンタルが弱い。勝手に自分がミスしちゃうんです。このレベルまで来ると(簡単に)食われちゃう。いつ5連続バーディーが来るか分からない、とか思いながら、気を張り巡らせてやっていました」

終始リードする展開にも一切、緩まなかった。

「やっぱり、これを勝てばシード権が…」と話すと目頭を押さえ、言葉を詰まらせた。ツアーNO・1の高額賞金大会。最低でも7位タイ750万円の賞金加算を決め、自分の中でシード確保の目安として設定していた「1500万円」まで約85万円と迫る。ツアー参戦11年目での初シードが見えてきたことで、感情があふれそうになった。

プロ2年目に下部ツアーで優勝も、レギュラーツアーへの関門となるファイナルQTで7度はね返された。「すごいビビリで、常に逃げ回ってゴルフをやっていた。チャレンジ(下部)でも出られていることに満足しちゃっている部分もあったかもしれない」。

転機は16年のファイナルQTだった。「やけになったんです。半分やけっぱち、半分冗談で『これで(通過目安の)35位に入れなかったら、もう(ゴルフを)やめる』と周りに言って自分を追い込んだら、急に良くなった」。

18位となってレギュラーツアーで場数を踏み、17年のファイナルQTも30位で通過。8月のRIZAP・KBCオーガスタでは自己最高7位に入った。

「逃げていたらダメなんだな、と」。言葉には実感がこもる。準々決勝の相手は池田勇太(32)に決まった。同郷で1つ年上の「大先輩」とは、1カ月前に亡くなった千葉晃氏(享年73)のジュニアスクールでともに腕を磨いた間柄だ。

「小6くらいで『この人には生涯かなわないだろうな』って思ってました。ずっと、憧れの人。明日は胸を借りて戦います」

臆することなく立ち向かう。