赤のシャツに黒のズボンという「勝負服」に身を包んだタイガー・ウッズ(43=米国)が、原点とも言える聖地オーガスタで、11年ぶり15度目のメジャー制覇を果たした。6バーディー、4ボギーの70で回り、通算13アンダーの275。同大会も14年ぶり5度目のVとなった。「また第一線で優勝できるとは想像もしていなかった。本当にうれしい。カムバックを果たしてマスターズで優勝できるのは最高のこと。(最終日は)自分のゴルフに集中できたのが大きい。冷静さを保つことができたのが一番の理由」と喜んだ。

首位と2打差の2位で迎えた最終日。前半こそ4、5番でボギーを打ったが7番で第2打をピン側30センチにつけて楽々、バーディーを奪うと火が付いた。後半に入ると10番こそボギーだったが、13番でバーディーを奪うと15、16番で連続バーディーを奪い、大混戦から抜け出し優勝を決定づけた。

最終ホールをボギーとしたのはご愛嬌(あいきょう)。最後のパットを決めると右手で力強くガッツポーズしたあと、今度は総立ちで祝福する歴史的な復活劇の証言者となったパトロンに向かって、あおるようにガッツポーズ。地鳴りのような大歓声が上がった。

完全復活を遂げた。14年から腰痛の影響でまともにプレーができない日々が続き、4度の腰の手術を行った。2年前には抗不安薬などの影響下で車を運転した容疑で逮捕。ここ数年はスキャンダルにまみれ、身も心もバラバラだった。

引退が頭をよぎったが、昨年、全英オープンで6位、全米プロゴルフ選手権で2位。シーズン最終戦では、ツアー5年ぶりの優勝と、トップシーンに戻ってきたことで自信を取り戻した。「パットに関して以前のように練習できない。背中が痛くなる。やりすぎないように。それが今、直面している課題。バランスのとれたものにする必要がある」と話し、自身の体と心を擦り合わせながら新たな境地を模索している。

これで米ツアー81勝目。サム・スニード(米国)の史上最多82勝、ジャック・ニクラウス(米国)のメジャー通算18勝の偉大な記録に手をかけた。「勝ちたい気持ちは変わらない」と43歳になっても気力に衰えはない。ウッズの第2章がここから始まる。