2位から出た渋野日向子(ひなこ、20=RSK山陽放送)がイ・ミニョン(韓国)とのプレーオフを制し、ツアー2勝目を挙げた。4バーディー、3ボギーの71で回り、通算12アンダーの276。「黄金世代」では3人目の複数優勝を果たした。

ツアー賞金ランキングも2位に浮上。今年1月に亡くなった門田実キャディーの妻和枝さん(享年44)にささげる勝利で、20年東京オリンピック(五輪)出場へ加速した。

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ウイニングパットを決めると、渋野は右手でガッツポーズをつくった。18番で行われたイ・ミニョンとのプレーオフ。グリーン左からの第3打を、ウエッジでふわりと高く打ち出すとピンそば1メートルにぴたりとつけた。今オフ、鹿児島・種子島合宿で何度も練習したショットを大一番で披露。ダブルボギーだったイ・ミニョンとは対照的にパーで締めて2勝目。観戦した母伸子さんに成長した姿をみせた。「(母と)優勝を分かち合えるのは本当にうれしい」と笑顔がはじけた。

後半14番終了時点でイ・ミニョンとは4打差。完全な相手ペースだったが15番パー4で空気を一変させた。15メートルのバーディーパットを沈めると、重圧をかけられたイ・ミニョンが崩れてダブルボギーで1打差に迫った。続く17番では、今度は2・5メートルを決め追いつき、逆転劇のお膳立てが整った。

最終18番グリーン上。渋野は門田キャディーから告げられた。「妻は強い人だった」。1月24日に亡くなった妻和枝さんへの思いを伝えられた。プレーオフ前に、勇気をもらい、燃えないわけがなかった。「奥さんのことはずっと思っていました。より一層、勝たないとと思って挑みました。勝てて良かった」。コンビ3戦目でつかんだ勝利を天国にも届けた。

プロ1年目で5月のサロンパス杯で初優勝した。目標を達成したことで、逆に目標を見失い調子を落としたが、指導する青木翔コーチの逆鱗(げきりん)に触れ自分を取り戻した。青木コーチは「ダメな自分も全部受け入れなさいと言った」。渋野は「素直にゴルフを楽しむしかない」と気づかされ、復調した。

先週の段階で世界ランキング81位で日本勢7番手。賞金を新たに加算し、東京五輪出場の上位2番手以内も微かに見えてきた。「チャンスがあるならつかんでいきたい」。黄金世代の実力者は、さらなる高みを目指し、まい進する。【松末守司】

▽渋野の母伸子さんは娘の成長に目を細めた。岡山から朝5時半の始発の新幹線で会場に駆けつけ、プロになって初めて観戦。「4打差で無理かなと思ったけど本人は諦めていなかったんだなと思って感心しました。七夕なので願いがかないました」と喜んだ。自身も学生時代は陸上のやり投げ選手とあって「五輪はアスリートにとっては魅力的。大きな夢を持つことは良いこと」と話した。

◆女子ゴルフ黄金世代 98年度生まれ(98年4月~99年3月生まれ)は「黄金世代」と呼ばれ、多くのスター候補生がいる。ツアー優勝は7人で、畑岡奈紗と勝みなみが、ともにアマチュア時代も含め4勝している。他はみな1勝で、昨年、新垣比奈、大里桃子が優勝。今年は河本結、渋野、原英莉花が優勝している。

<渋野日向子の使用クラブ>

▼1W=PING G410 PLUS(シャフト=フジクラスピーダー569、硬さSR、10・5度、長さ44・75インチ)▼3W=同 G410(14・5度)▼5W=同G410(17・5度)▼UT=同 G410(22、26度)▼アイアン=同 i210(5I~PW)▼ウエッジ=同 GLIDE FOGED(52、58度)▼パター=同 SIGMA 2 Anser▼ボール=タイトリスト プロV1