2020年の男女ゴルフツアーが新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、開幕戦からストップしている。ここまで中止、延期となった各大会の名場面を振り返ります。

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▽2014年(平26)大会(3月28~30日、宮崎・UMKCC)

新たな飛ばし屋が飛び出した。プロ3年目の渡辺彩香が最終日の最終18番で逆転イーグルを決め、ツアー初優勝を飾った。16番パー3、17番パー4は連続バーディー。上がり3ホールでスコアを4伸ばし、同組で首位だった藤田幸希との3打差をひっくり返した。

最後にドラマが待っていた。藤田と1打差。渡辺は、18番パー5で、グリーン左ラフからの第3打。第20ヤードのチップショットは、グリーン面にキャリー、軽いフックラインを描いてカップに消えた。

「(バーディーで)プレーオフにすることだけを考えていた。もちろん『入ればいいな』とは思ったけど…」。逆転イーグル後、入ればバーディーの藤田のアプローチが外れ、優勝が決まった。

奇跡のシナリオを演出したのは3番アイアン。残り219ヤードの第2打で使い、チップイン圏内にボールを運んだ。フェアウエーウッド、ユーティリティーが全盛となり、肩身が狭くなったロングアイアンは今どきの女子プロには手に余るクラブ。それを中学から使っていた。

規格外のスケールを感じさせたエピソードがある。両親は岡本綾子の大ファンで「『綾』の字いただきたい」と思い、画数を調べた結果「彩香」と名付けた。

憧れは当時「キャリーの距離は世界一」を自負した福嶋晃子。10歳のとき、地元神奈川の大箱根CC開催だったCATレディースでプレーを見た。「福嶋さんみたいになりたい」といつでも“マン振り”を心がけ、熱海の砂浜を走って体を鍛えた。

渡辺は「米ツアーにも行きたい。海外メジャーにも勝ちたい。でも、最大の目標はオリンピックのメダルです」と、飛距離同様に大きな夢に思いをはせていた。

■過去5年の優勝者

15年 笠りつ子 -7

16年 キム・ハヌル -9

17年 若林舞衣子 -9

18年 フェービー・ヤオ -12

19年 河本結 -15