2020年の男女ゴルフツアーが新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、開幕戦からストップしている。ここまで中止、延期となった各大会の名場面を振り返ります。

◇   ◇

▽2009年(平21)大会(6月25~28日、兵庫・よみうりCC)

石川遼が、最終日の1ホールに9打を要しながら優勝という、ツアー史上初の珍事でファンを魅了した。12番パー4でOBを2連発。それでも16番パー5では、チップインイーグルのミラクルショットも飛び出すなど、山あり谷ありの劇場型ゴルフで、ツアー通算3勝目を挙げた。史上最年少の18歳で賞金王となる09年最初の優勝。当時はまだ17歳だった。

第3ラウンドを終え、2位と3打差の首位だった。最終日に向けて「1番から3連続ボギーでもいい。トリプルボギーでもいいのだから、何も怖がらずにやれる」と話していた。最終日も、1番から3連続ボギーどころか、前半を終えてスコアを2つ伸ばすなど順調に滑り出していた。

ところが、2位に5打差をつけて独走状態だった12番パー4で、落とし穴が待っていた。ドライバーで2連続の左OB。「頭が真っ白になった」。大たたきの「9」に、上下とも真っ赤なウエアとは裏腹な精神状態となった。5打の貯金を一気に吐き出し、スメイル、金亨成と3人が並ぶ展開となった。

それでも続く13番パー3のティーでは、加藤キャディーに「やっちゃった」と照れ笑いを浮かべるほど、気持ちはリセットされていた。その13番は、第2ラウンドで池ポチャ、同組で直前に打った金亨成も池に入れていた。池に近い左端のピンではなく、手堅く右を狙いたくなる場面も「何となく自信があった」と、ピンを狙って3メートルにつけた。バーディーこそ逃したが、攻めの姿勢は幸運を呼び込む流れを生んだ。

16番パー5。右ラフから残り30ヤードの第3打は、グリーンを転がり、ピンに当たってカップに入った。「あのスピードでピンを外したらグリーンを出てしまう。人ごとのようだった」。後続を3打差に引き離すチップインイーグルに、天を見上げた。その3打差を守って優勝。最終日に「9」をたたいての優勝は、91年日本オープンの7番パー4で中嶋常幸がたたいた「8」を上回る、優勝選手の最終日1ホールのワーストスコアだった。

珍記録の一方で、日本人選手としては最年少となる、全英オープンへの出場も決めた。推薦枠出場でのマスターズ、全米プロと違い、自力でもぎ取った。「ゴルフの聖地に行けることで興奮している。勝ち取ったという誇りを持っていい」。全英オープンは予選落ちしたが、この年はミズノ・オープンを含めて4勝。国内外で賞金1億8350万円余りを稼ぎ、史上最年少の賞金王となる勢いをもたらした大会となった。

■過去5年の優勝者

15年 手嶋多一

16年 金庚泰

17年 チャン・キム

18年 秋吉翔太

19年 池田勇太