2020年の男女ゴルフツアーが新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、開幕戦からストップしている。ここまで中止、延期となった各大会の名場面を振り返ります。

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2018年(平30)大会(茨城・宍戸ヒルズCC西)

市原弘大がプロ18年目にして、国内ツアー初勝利をメジャー初制覇で飾った。首位の時松隆光に対し、最終18番のチップインバーディーで追いつきホールアウト。その18番で時松がボギーをたたき、市原の優勝(12アンダー)が決まった。メジャー制覇で5年シードと、大会終了時の賞金ランク2位までが得られる7月の全英オープン出場権も獲得した。

市原は優勝のことが全く頭になかった。ホールアウト後のスコア申告の際に、係員に、時松と首位で並んでいることを知らされた。プレーオフに備え、慌てて向かった練習場で、今度は優勝の知らせが飛び込んできた。17年間勝てなかった男の、無欲の勝利だった。

「コースと戦うのに必死で、周りのスコアも全然見ていなかった。それがよかったかも。実感がまじないです。これからが大変なことになりそうです」と、満面に笑みを浮かべながら、市原はひとごとのように話した。

無欲が優勝を決めたチップインバーディーを呼び込んだ。中盤の3ボギーが響いて残り4ホールでトップに4打差とされ、1度は優勝戦線から脱落した。が、15、16番と連続バーディーで息を吹き返し、迎えた18番。第2打がグリーンをオーバーし、土手下から15ヤードの第3打が、カップに吸い込まれた。「狙って打っていません。ボクが一番驚いています」と笑った。

師と仰ぐ谷口徹がかけつけてくれたときは、思わず涙が出そうになった。「でも、すぐに(お祝いの)水をかけられて、涙が引っ込んだ」という。それでも、谷口のもとで一緒に練習をした仲間に水をかけられると、涙があふれた。

プロデビューから17年5カ月での勝利は、日本人のスロー記録9位。パターイプスや腰痛など故障にも悩まされた。転機は、前月の日本プロゴルフ選手権で優勝した谷口の存在だった。優勝当日、14番から一緒について回り、祝福の水かけにも参加した。「優勝争いの中で普段と変わらないリラックスした姿、姿勢を自分に取り入れたいと思った」と、谷口を手本にこの大会を戦った。

市原は、日本にこだわらず、アジアツアーなど世界へ積極的に出て行った。アジアツアーの仲間たちからは「スマイル」の愛称で親しまれる。「5年シードの責任は重い。気を引き締め、これから切り替えてやっていきたい」と真剣なまなざしで言った。市原はこの年11月のダンロップフェニックスでも逆転で2勝目を挙げるなど、大躍進を遂げた。

■過去5年の優勝者

 

15年 梁津萬 -14

 

16年 塚田陽亮 -2

 

17年 ショーン・ノリス -13

 

18年 市原弘大 -12

 

19年 堀川未来夢 -15