20年国内女子ツアー開幕戦で、渡辺彩香(26=大東建託)が5年ぶりとなる涙の復活優勝を飾った。通算4勝目。

4打差4位から出て68をマークして通算11アンダー、277。昨季賞金女王鈴木愛(26)とプレーオフ(PO)に入り、1ホール目のバーディーで勝負を決めた。16年リオデジャネイロオリンピック(五輪)代表が決まる同年の全米女子オープン最終日、最終18番パー5で池ぽちゃをして涙の落選。あれから4年-。プロ8年目の飛ばし屋が、来夏の東京五輪へ再出発を切った。

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持ち球フェードと同じ、右曲がりのスライスラインを読み切った。プレーオフ1ホール目の18番パー5。渡辺は下り4メートルのバーディートライがカップに消える瞬間、パターを持った左手を突き上げた。

優勝インタビュアーは茂木宏美。最後の優勝だった15年「樋口久子Pontaレディース」の最終日最終組で戦った。強かった自分を知る先輩にマイクを向けられて「…結構厳しかったですね」と涙があふれた。

悪夢は16年7月10日に始まった。豪快な飛距離を武器に挑んだ五輪代表争いのラストマッチ、全米女子オープン最終日の最終18番パー5。ピンまで65ヤードの第3打がグリーン手前の池に消えた。試合後発表された世界ランクはライバル大山の43位に届かぬ45位に。最後がパーなら、結果的に五輪に出られた。号泣した。

「リオに行けず、レベルアップしようと“足りないもの”ばかり考えて」。ほぼスライスだった持ち球フェードを真っすぐにしようとあがき、逆曲がりのドローにも手を出した。泥沼にはまった。18年に賞金シードを失い、昨季はツアー出場30戦で23戦予選落ち。18年に252・11ヤード(4位)だったドライバー(1W)平均飛距離も238・19ヤード(42位)まで落ちた。「私から1Wを取ったら、何が残るんだろう」。そう思いつつも、結果が欲しくて1Wをバッグから抜いた試合まであった。

昨夏過ぎ、覚悟を決めた。「私にはフェードしかない」-。ツアー出場権をかけたQTから、絶頂期の5年前に使っていた1Wを投入。自粛期間は徹底して、左に出して右に戻すショットを繰り返した。この日の最終18番、第1打はキャリーだけで248ヤードを計測した。「今週は大好きな1Wが、本当に気持ちよく振れた。だから、優勝できなくても、うれしかったと思う」。ゴルフの快感を、自分の真価を取り戻した。

停止中の世界ランクは452位。「五輪が延期されたのは運があるのかもしれません」。本来なら東京五輪代表決定のデッドラインだった日に飾った復活劇。渡辺は「遠い道のりですけど…」と照れながらでも、確かに、東京五輪出場挑戦を宣言した。【加藤裕一】

◆渡辺彩香(わたなべ・あやか)1993年(平5)9月19日、静岡県熱海市生まれ。ゴルフは10歳から。中3の08年日本ジュニア(12~14歳)で優勝。09年からナショナルチーム入り。埼玉栄高卒。12年プロテストに合格。13年賞金ランク46位で初シード、14年アクサレディースで初優勝。5年連続保持した賞金シードを18年に喪失。172センチ、65キロ。

<渡辺彩香の優勝クラブ>

▼1W=ブリヂストン ツアーAD J15(シャフト=グラファイトPT-6 ロフト9・5度、硬さX、長さ44・75インチ)▼3W=同ツアーB 18X(15度)▼5W=同ツアーB 18X(18度)▼4UT=PING G410(22度)▼アイアン=5I~6I(ブリヂストンツアーB 18X-CBP)、7I~PW(同ツアーB 18X-CB)▼ウエッジ=同ツアーB XW-1プロト(48度、52度)、同ツアーB XW-B(58度)▼パター=グリッドデザイン ブレードタイプ▼ボール=ブリヂストンツアーB X

▽原英莉花(スコアを5つ伸ばし5位)「本当に試合は楽しい。ここで勝つために練習しているので前向きに頑張っていきたい」

▽西郷真央(プロデビュー戦で優勝者と2打差の5位と大健闘)「7割ぐらいは残念ですけど、4日間アンダーはすごい大きなこと。(864万円の)賞金は、トラックマンの購入と母への親孝行に使いたい」

▽笹生優花(最終日68とスコアを伸ばし、プロツアーデビュー戦で5位)「ここまでこれて良かった。アマのときは順位よりプロから学ぶことが大事だったけど、プロでは順位とかお金もかかってくるので、そこが一番の違いです」