渋野日向子(21=サントリー)が難コースで首位と3打差の暫定13位と好発進した。強風の中、5バーディー、3ボギー、1ダブルボギーの70。ボギーかそれより悪いスコア直後にバーディー以上でカバーする代名詞の「バウンスバック」も飛び出し、自信も取り戻した。2カ月にわたる欧米遠征の最後の戦いで、優勝の可能性も見えてきた。畑岡奈紗、河本結は2オーバーで同40位。野村敏京は4オーバーで同74位と出遅れた。

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不屈のしぶこが戻ってきた。2番で12メートルのバーディーパットを決め勢いに乗るかと思われたが5番でボギー。それでも、続く6番でバーディーを奪い返しバウンスバック。さらに8番ボギーの後の9番パー5では、第3打をピン奥50センチにぴたりとつけてバーディー。2度のバウンスバックで息を吹き返した。

これが2カ月の欧米遠征の最終戦。「これまでの集大成と思っていたので、去年よく言われていたバウンスバックが久しぶりに出て、すごくうれしかった」と前半で手応えを感じていた。後半12番パー4では、2オンのあと悪夢の4パットでダブルボギー。続く13番でもボギーをたたき、3つスコアを落としたが、“バウンスバック精神”は失わなかった。

パターの微妙なタッチが合わなくても、この日の渋野にはショットがあった。15番で第2打をピン奥2・5メートル、18番パーでも第2打を2メートルにつけ、ともにバーディー。終盤に2つ取り返し、首位から3打差の暫定13位。強い横風に苦しむ選手が多い中、ドライバーのフェアウエーキープは、14打中13。ショットも思った通りの位置につけて、米ツアー挑戦6試合目で、その能力の高さを証明した。

「今日のゴルフはすごく、今までとちょっと違うなと思える18ホールだった。米ツアー6試合で一番よかったんじゃないかと思います」としぶこスマイルも飛び出した。強風のリンクスから始まり、灼熱(しゃくねつ)の米メジャー、山火事による大気汚染、パットがまったく読めないポアナ芝…。ここまで、苦境の中でも「自分には伸びしろしかない」と前向きにとらえ、心と技術の経験値を積み上げてきた。

今回の海外遠征の中で、米ツアーへの思いはより強くなった。当初は来年からの本格参戦を見据え経験を積む予定が、コロナ禍で来年の米ツアーの予選会は中止。渋野が来年の米ツアー出場権を得るには、今年の米ツアーで優勝するしかない。そのために、毎試合優勝を目指して戦っている。前週の大会後は「まだ実力不足」と言っていた優勝争い。試合ごとに進化する渋野が、樋口久子が43年前に日本人として初めて優勝した大会で、メジャー2勝目に挑戦する。