米男子ゴルフでアジア人初のマスターズ制覇の偉業を果たした松山英樹(29=LEXUS)に、国内ツアーの永久シードが与えられる可能性が浮上した。快挙から一夜明けた13日、関係者の間で特例検討の声が上がっている。通常は国内ツアー通算25勝以上の選手が対象。青木功、尾崎将司、中嶋常幸らのレジェンドと同様、日本人初のメジャー王者がいつでも国内でプレーできる環境を整え、日本ゴルフ界の発展につなげたい考えだ。

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優勝でマスターズに永久に出場できる資格を得た松山に、今度は国内ツアーでも永久シードが与えられる動きが出てきた。関係者は「マスターズ優勝は日本人で誰も果たしたことのない偉業。永久シードに十分、値するという声がある」と明かした。永久シードは本来、ツアー通算25勝が条件だ。規定で定められ、特例で承認されるには、さまざまな手続きが必要。それでも関係者は「メジャー王者が日本の試合に出場することで、間近でプレーを見た若手選手や子どもたちへの影響は計り知れない」と、競技力向上を期待する。

松山は現在、国内ツアー8勝、米ツアーはマスターズで6勝目となった。計14勝。25勝には遠いが、そもそも米ツアーでの6勝も日本人男子の歴史で松山がダントツ。すでに国内ツアー25勝と、同等以上の力量を示しているとの声もある。

松山はマスターズの優勝会見で、日本への影響を問われ「僕がここで勝ったことで、今、テレビで見ている子どもたちが5年後、10年後、この舞台に立って、トップを争うことができたら、すごくうれしい。そのためには、まだまだ僕も、この先、勝っていかないといけない」と語っていた。当面は米ツアーが主戦場の見通し。だが将来的に日本で、いつでも試合に出られる環境が整えば、メジャー初優勝をリアルタイムでは知らない、さらに若い世代にも影響を与えることができる。それこそが特例で永久シードを与える狙いだ。

新型コロナウイルスの影響で、日米ツアーとも日程が変則的だった昨年は、出場は米国の試合だけだった。だが通常なら国内ツアーや、日本で開催する米ツアーのZOZOチャンピオンシップなど、年数試合は日本でプレーする。皮肉にもメジャー王者となったことで、国内ツアーへの出場のハードルが上がったと、別の関係者は指摘。「松山選手のスポンサーが主催の大会以外で招待するには、タイガー・ウッズ選手らと同等の出場料が必要になってくる。1ケタ多くなると思う」と明かした。

松山のプレーを国内で見られる機会は、現状では少ない。永久シードを保持していれば、ZOZOチャンピオンシップの前後に、国内ツアーで調整など、松山サイドの思惑で気軽に出場できる。そういった機会が増えれば、ファンにとっては願ったりかなったり。今後の動向が注目される。

◆永久シード 日本ゴルフツアー機構(JGTO)が主管する日本ツアーの試合に出場する権利を永久的に保障する制度。73年ツアー制施行後に通算25勝した選手に与えられる。女子は同30勝以上。

◆永久シード達成者(カッコ内は勝利数)

青木功(51勝)

尾崎将司(94勝)

中嶋常幸(48勝)

倉本昌弘(30勝)

故杉原輝雄氏(28勝)

尾崎直道(32勝)

片山晋呉(31勝)

◆ゴルフ界の特例 日本女子プロゴルフ協会は03年2月、アマチュアがツアー優勝した場合、4週間以内にプロ宣言をすればプロ出場資格を得るとの特例を設けた。同年9月、当時東北高3年の宮里藍がミヤギテレビ杯で優勝。特例措置としてプロテストの実技免除となり、筆記試験のみを受けてプロとなった(同措置はのちに制度化)。