夢が現実になった。マスターズで松山英樹(29=LEXUS)が日本男子初のメジャー制覇を成し遂げた。

松山にとって念願だった勝利は、日本のスポーツ界にとっても快挙。さまざまな人物、側面から「夢のマスターズ 日本人初V!!」と題した連載で、この偉業に迫る。

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松山は、ゆかりある太平洋クラブ御殿場コース(静岡県御殿場市)の設計に深く関わっている。伝統ある三井住友VISA太平洋マスターズの舞台。松山は11年の大会で国内ツアー史上3人目となるアマチュア優勝を果たし、16年の大会では今も破られていない通算23アンダーの265で回っている。同コースの小林泰隆支配人(53)が松山との取り組みについて話した。

「16年のコースレコードが、18年の改修工事のきっかけの1つになりました。歴史ある日本のマスターズにふさわしい世界レベルの難しいコースにするため、世界的設計家リース・ジョーンズ氏設計のもと、松山選手にも監修していただきました」

11番のロングホールは、グリーン右側の木について、切る、切らないの議論になった。そこで松山から「切らない方がいい」と、あえて難しいコースにするよう意見をもらったという。小林支配人は「木の位置やグリーンの傾斜をしっかり覚えていて、現地ではない会議の場でも、選手目線で的確にアドバイスしていただいたことが印象的です」と言う。

松山は改修後の18年11月の大会に出場した。調子がいまひとつだったこともあり、6番ホールで苦戦。そこは松山のアドバイスでパー5のところを、大会ではパー4に設定。より難易度の高いコースに生まれ変わったという点では改修は成功だった。

大会後にも松山のアドバイスで、6番ホールのフェアウエーラインを変更したり、11番にバンカーを1つ増設したりと「世界水準に」と強いこだわりをみせたという。そんなメジャー制覇を意識した飽くなきコースづくりも、自らのマスターズ優勝への遠因となっていたのだろう。

松山の人物像について、小林支配人は「妥協を許さない。試作クラブに関しても、メーカー担当者に細かいところまで意見やアドバイスをされているようです。練習もものすごくする方」と尊敬する。

今回のマスターズはテレビにかじりついて観戦。「とにかく感動しました。三井住友VISA太平洋マスターズの開催コースにかかわる者として、大変うれしく思います」。今年11月、松山が凱旋(がいせん)出場することを熱望している。【倉橋徹也】