首位に3打差から出た東京五輪銀メダルの稲見萌寧(22=都築電気)が、5バーディー、ボギーなしの67で回り、通算16アンダー、274で逆転優勝した。昨年と統合された今シーズン7勝目で通算8勝目。22歳31日での8勝到達は、05年の宮里藍(19歳337日)、07年の横峯さくら(21歳305日)に次ぐ3番目の若さとなった。先週のCATレディースでは、首位で迎えた最終日に77をたたき逆転負け。その悔しさを晴らし、目標とする2桁勝利も視野に入れた。

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抜群の安定感で、稲見が今季7勝目をたぐり寄せた。強風の中でも持ち味のショットは最後までブレない。79人中、アンダーパーで回る選手が12人のみとなる中、ボギーなしで全選手最高の67をマーク。首位との3打差も難なくひっくり返した。「(先週の)リベンジができてよかった。これで終わることなく勝ち続けられるように頑張りたい」。納得の表情で語った。

笑顔の背景には、鬼門を攻略した喜びがあった。小樽CCは横風に加え、グリーンもマウンドがあり難易度が高い。出場を回避する選手もいるコースで、稲見も19年の初出場時は壁に当たった。2度3パットを喫するなど苦しみ、パターを持つと不安で手が震えた。イップス寸前で周囲の助言もあり、3オーバーで終えた初日後に棄権した。昨年は欧州遠征と重なり欠場。開幕前から「苦手意識がある」と繰り返した2年ぶりの舞台で成長した姿を披露し、最後には「めちゃくちゃ楽しかった」と話した。

当時もバッグを担いでいた古賀雄二キャディーは、稲見の強さについて、パッティングの向上に加え「ショットの正確性が半端じゃないくらい違った」と語る。「風があっても関係ない。難しいホールでも、そこってところにしか打ってこない」。今季最多7勝、メダリストにもなった稲見に2年前の姿はもうない。

最終日は靴ずれなどで右足裏に「うおのめ」ができた。その痛みとも闘い、足をひきずりながらのラウンド。稲見は「唯一の救いが、スイングの時は痛くなかった」。今では多少のハンディを負っても勝てるたくましさがある。20年との統合シーズンながら1シーズン7勝は、不動裕理(03、04年)、イ・ボミ(15年)、鈴木愛(19年)以来4人目の快挙。今季は残り13戦あり、目標の2桁勝利達成の可能性も十分だ。「毎週ぶっちぎりで勝ちたい」。群雄割拠の女子ゴルフ界で、その強さに磨きがかかってきた。【松尾幸之介】

<稲見萌寧の優勝クラブ>▼1W=キャロウェイ マーベリックサブゼロ(シャフト=USTマミヤ ジ・アッタス5、硬さS、ロフト10・5度)▼3W=ダンロップ スリクソンZX(15度)▼ユーティリティー=ダンロップ スリクソンZX(3U19度、4U22度、5U25度)▼アイアン=5I~PW=テーラーメイド P770▼ウエッジ=タイトリスト ボーケイSM8 52-08F(52度)、同SM8 58-08M(58度)▼パター=テーラーメイド トラスTB1▼ボール=ブリヂストン TOUR B XS