松山英樹(29=LEXUS)が、4月のマスターズ以来となる米ツアー通算7勝目に王手をかけた。首位から出て、4バーディー、2ボギーの68と2つ伸ばして回り、通算10アンダー、200。2位のキャメロン・トリンゲール(米国)を1打リードして最終日に臨む。日本で行われたプロの試合では、第3ラウンドを首位通過すれば過去7戦6勝の勝率85・7%。16年国内ツアー、三井住友VISA太平洋マスターズ以来、5年ぶりに日本のファンの前で優勝を見せる。

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出だしの1番で、いきなり首位に並ばれても、松山は動じなかった。1打差2位で同組のトリンゲールがバーディー発進。だが松山は、2番パー4の第2打を3メートルにつけて大歓声を浴びた。動揺したように、ボギーで振り出しの7アンダーに戻ったトリンゲールをしり目に松山はバーディー。一気に2打差に広げ、その後は強い風の中でも追いつかせなかった。「難しいコンディションの中、いいプレーはできたと思う」。3日間60台を並べ、上昇ムードで日本人男子歴代最多の米ツアー7勝目に挑む。

日本で第3ラウンドを首位通過した過去7戦は6勝と、85・7%の高勝率が後押しする。唯一、逃したのは、プロ1年目の13年日本プロ選手権。初めて首位で最終日を迎えた不慣れな状況で勝ちきれなかったが、その後は6連勝中。米ツアーを含めても第3ラウンドで首位なら、12戦8勝で66・7%の高勝率だ。「良いプレーをすれば勝てると思うし、悪かったら負けると思う。いいプレーが3日間できているので、続けられるように頑張りたい」。攻撃は最大の防御。最終日も攻め続けることが、首位堅守に近づくと知っている。

松山の活躍による盛り上がりに、米PGAツアー幹部も興奮を隠せない。クリスチャン・ハーディ上級副社長(46)は「ヒデキはPGAのアイコン(象徴)。初めて会った時から日本のリーダーになると思っていた」と絶賛。クリス・リー・アジア太平洋社長(41)は「ヒデキは中国や韓国にも影響を与える存在」と評した。この日は新型コロナウイルス対策で上限5000人の中、観衆4913人が駆けつけた。ハーディ氏は「日本は特別な国。大きなマーケットもある。ZOZOに続く第2の大会を開きたい」と、打ち明けた。

例年は中国や韓国でも試合を開催するが、今年は中止や米国での代替え開催とした。それでも日本で開催したのは、松山を特別な存在としていることにほかならない。「トップで終われたのはよかった。明日(最終日)頑張りたい」。日本のファン、米ツアーの将来と、さまざまな期待が集まる中、短い言葉に決意をにじませた。【高田文太】

◆日本開催の米ツアー 男女ともに1試合ずつ行われている。男子は19年から6年契約でZOZOチャンピオンシップを開催。今回と同じ習志野CCで行われた第1回大会は、タイガー・ウッズ(米国)が優勝、松山が2位となり盛り上がった。第2回の昨年は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で米カリフォルニア州で開催、パトリック・カントレー(米国)が優勝した。女子はTOTOジャパン・クラシックを滋賀・瀬田GCで例年11月に開催。だが昨年に続き今年も、コロナ禍で米女子ツアーメンバーの来日は困難との判断で、国内ツアーの1試合として実施予定。日本女子プロゴルフ協会と共催の19年大会までも、ZOZOチャンピオンシップも、日本人選手が多く推薦出場する。