西郷真央(20=島津製作所)が鮮やかな逆転で今季4勝目を飾った。最終日の前半を終えて、首位と4打差の6位だったが、終盤の15番でイーグルを決め、一気に逆転。1イーグル、2バーディー、ノーボギーの68で回り、通算10アンダー、206で制した。年間7試合出場での4勝は史上最速記録。首痛で2戦連続欠場後の復帰戦で圧倒的な強さを見せた。首位から出たテレサ・ルーが8アンダーで2位。2週連続Vを目指した高橋彩華と前年覇者の上田桃子が7アンダーで3位に入った。

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鮮やかな逆転劇だった。首位に1打差の3位で迎えた15番パー4。残り169ヤードのフェアウエー左端からの第2打だった。6番アイアンを振り抜いた西郷は「よし!」と手応えを感じた。ピン手前に落ちて大きくワンバウンド。ボールは約7メートル転がりカップに吸い込まれた。スーパーイーグルで、ルーと2週連続Vを狙った高橋を抜き去り、一気に単独首位に躍り出た。

あまり喜怒哀楽を出さないタイプだが、両手を高々と上げて大喜び。「すごいショットを打てた。つま先下がりの難しいライからで100点に近い。心臓がドキッとした。帰り事故らないかな(笑い)」。18番パー5では2オンに成功。計算通りの2パットでバーディー締め。「苦しい展開が続きましたが、いい流れで最後までプレーできた」と振り返った。

昨季は2位7回も0勝だったが、今季開幕戦でツアー初優勝すると、出場7戦4勝。優勝を逃した3戦も2位2回に10位と驚異的な成績を残す。「早く1勝を挙げたいと思っていましたが、こんなにいい結果が出ると思わなかった」。本人も驚くペースだが、裏付けはこの日のプレーに表れていた。

パーで耐えた前半の終了時点で首位に4打差の6位。12番パー5で初バーディーを奪って2打差に迫る。すると勝負どころで、課題だった約50ヤードのショートゲームの練習の成果が出た。14番パー4。ティーショットを左に曲げた。「第2打で勝負をかけなくても、パーセーブできる確率は高い」。グリーンを狙わず、木の下からフェアウエーに出し、残り53ヤードからの第3打を約2メートルにつけてナイスパーセーブ。直後のイーグルを呼び込む布石ともなった。「昨年までの自分なら、バーディーが来ない展開では、パーセーブできず、だらだらとスコアを落とした。バーディー待ちができるプレースタイルに成長できた」。

首痛で2戦欠場後の復帰戦だったが「痛みもなく、問題なくプレーできた」。次週は今季の国内メジャー初戦ワールド・サロンパス・カップ。師匠の尾崎将司から「次はメジャー優勝を」とハッパを掛けられている。「1打1打集中し、やるべきことをやった結果、優勝できれば」。平常心でメジャー初制覇に挑む。【近藤由美子】

◆西郷真央(さいごう・まお)2001年(平13)10月8日、千葉県生まれ。ゴルフは5歳から開始。師匠は尾崎将司で麗沢高3年の19年日本女子アマ優勝。同年11月プロテストに18位合格し“高校生プロ”に。アマチュア時はツアー10戦で予選通過4度。ルーキーだった20-21年シーズンは賞金約1億7900万円を獲得。0勝選手で最高の賞金ランク4位に。日本ウェルネススポーツ大在学中。憧れのプロは不動裕理。158センチ、57キロ。

<西郷が達成したおもな記録>

◆史上最速 7試合目で年間4勝は、04年に10試合目のスタンレー・レディースで達成した不動裕理、18年に10試合目のニチレイ・レディースで達成した鈴木愛を抜き、年間4勝時の出場試合最速記録を更新。

◆継続中 21年から続く連続アンダーパー試合数は30となり、自身が持つ最多記録更新。

◆史上5番目 通算4勝目を20歳205日で達成。04年宮里藍(19歳1日)、18年畑岡奈紗(19歳295日)、20年古江彩佳(20歳179日)、06年横峯さくら(20歳201日)に次ぐ史上5番目の年少記録。

○…ツアー初優勝から2週連続Vを狙った高橋は通算7アンダーで3位だった。「この風の中では良いゴルフをしたかな」。初優勝は10回目の最終組最終日で「十度目の正直」を成し遂げたが、この日は最終組1つ前の組だった。17番パー3で痛恨のボギー。優勝争いから脱落した。「17番が…」と悔やんだ。2週連続Vを逃したが「意識は特にしてなかったですが、流れがそんなに良いわけではなくて。耐えながらその中でできる精いっぱいでした」と振り返った。

〈首位から出たが、西郷と2打差の2位に終わったルー〉悔しいは悔しいけど、そこまで。まだ大丈夫。バーディーチャンスもあったが、パターのショートが多かった。