<とっておきメモ>

優勝から遠ざかっていた2年間、胸中は痛みに関することと、後悔が大部分を占めていた。米男子ゴルフツアーのジェネシス招待を6打差7位からの逆転で制した松山英樹(31=LEXUS)は、前回優勝した22年、首から背中にかけての痛みに、何度も襲われた。

この年はキャリア最多となる年4度の棄権を経験。それでも、昨年末にインタビューした際には「我慢して出ていた」と明かしていた。昨年唯一、棄権したのがBMW選手権(8月)。年間上位30人しか出場できないシーズン最終戦のツアー選手権へ、10年連続となる出場権を懸けた舞台を、最後まで戦えなかった。

インタビューでは当時を振り返り「無理すればプレーはできた。ただ首を最初に痛めた時と同じ感じだった。この痛みを我慢してやって、また同じ状況に陥りたくなかった。無理した結果、首痛が長引いた。怖さが勝ってしまった」と、それ以前の後悔が、棄権を決断させたと打ち明けた。

そんな中、昨年のZOZOチャンピオンシップのラウンド後に“マン振り”を繰り返し、状況改善に打って出た。「試したかった。次の週から休みだったし、どこまで練習したら痛みが出るのか。逆に出ないのかを。ZOZOは2日目にたたいて上位争いは厳しかった。次の日に結果を出すこと以上に来年以降のきっかけを探していた。どこまで打てるのか。試合をやりながらでしか分からない部分があるから」。今季を見据えた昨秋の強行練習で痛みの出方、対処法を学んだ。

けがに苦しむ以前、こうも話していた。「30代は、いろんな経験をして選手として1番強くなる時期」。回り道をした分、心身ともに一回り成長して帰ってきた。【高田文太】