<男子ゴルフ:ANAオープン>◇最終日◇22日◇北海道・札幌GC輪厚C(7063ヤード、パー72)◇賞金総額1億1000万円(優勝2200万円)

 小田孔明(35=フリー)が得意の逃げ切りで、2年ぶりツアー通算6勝目を挙げた。単独首位で出ると、4バーディー、ノーボギーの68と危なげないプレー。通算15アンダー273と、最終的に2位を4打差まで突き放した。初勝利以来、これで最終日首位スタート時は全勝。表彰式で左肩を“脱臼”するアクシデントもあったが、米ツアー本格参戦前の最後の試合となった松山英樹(21)の快進撃を食い止め、国内ツアー勢の意地を見せた。

 中国伝説の軍師、諸葛孔明も顔負けの「逃げ切りの計」が、今回も大成功した。最終18番パー4。すでに優勝を確信した小田孔は、1メートルのパットを沈めると、軽く手を挙げて歓呼の声に応えた。「第3日が終わって首位にいれば、逃げ切れると思ってました」。そう語るだけあって、逃げ切りの戦略は堂に入っていた。

 2位で出た同組の藤田に、常に先んじてバーディーを挙げ、リードを確保。11番パー3では、25メートルのバーディーパットをねじ込む「奇襲」も成功した。終盤に「藤田さんが乱れたので、大丈夫かな」と勝利を確信すると、手堅いパーセーブを重ねて逃げ切った。

 2年間未勝利の間に、35歳になった。ツアー中断中の8月、プロアマ合同大会のJOYXオープンに出場した際、伊沢利光からテレビ中継の解説で「年齢のせいか、体の捻転(ねんてん)が小さくなった」と指摘された。これを聞いた飯田光輝トレーナーが、今大会から朝のウオームアップの際、捻転の範囲が広がるメニューを強化。これが奏功してか、20度を切る肌寒さの中でも、キレの良いショットを連発した。

 表彰式でブレザーに無理に腕を通そうとして「肩が外れた」のはご愛嬌(あいきょう)。「松山がいる間に勝てて良かった」と満足げにうなずく。米ツアー本格参戦のため、松山の国内ツアー出場は今回で一区切り。今勝たなければ「松山がいなくなったから勝てた」と言われても仕方ない、という危機感があった。「勝ったから余裕もできて、いろいろ目指せる。世界ランク100位以内に戻って、海外メジャーにも出たい」。屈指のショットメーカーが、石川・松山コンビ不在で岐路を迎える国内ツアーを引っ張る。【塩畑大輔】