もうすぐ2019年、ワールドカップ(W杯)イヤーが幕を開ける。日本代表が、日本ラグビー界が、9カ月後に迫った本番にどう向かうのか。元W杯日本代表で日刊スポーツ評論家の今泉清氏(51)がベスト8入りを目指す日本代表を語り、大会への準備で持論を展開した。年内最後の「ラグビーW杯がやってくる」は、19年への提言で締めくくる。

いよいよW杯の年、楽しみですね。特に、日本代表には期待しています。ニュージーランド、イングランド相手にいい試合をした。勝つことはできなかったけれど、戦えないということはなかった。イングランド戦など前半リードしましたから。W杯への階段をしっかり上がっていますね。

もちろん、課題はあります。スクラムは良くなったけれど、ラインアウトは身長2メートルの相手に苦しんでいる。キックしたボールの再獲得という面も、まだできていない。さらに、攻撃で終わることも重要。サッカーでも「シュートで終われ」と言いますが、積極的にDGを狙うなど、考えないといけない。ミスからターンオーバーされることは精神的なダメージも大きく、失点のリスクもありますから。

バックスも「外、外」といきすぎですね。あれでは相手も守りやすい。CTBのトゥポウとラファエレは技巧派だけれど、相手の脅威にはなれていない。もっと縦への動きもほしい。縦に出られる選手がいれば、外への攻撃も生きてきますから。ケガから復帰した立川(理道=クボタ)ならパンチ力もあるし、今の代表に必要だと思いますね。

日本代表は大会を盛り上げてくれると思います。でも、ラグビー界の努力も大切。W杯があるということが、いまひとつ浸透していないように感じる。みんな20年東京五輪には興味があっても、W杯ラグビーは知らない。選手もそう感じているんじゃないですか。

もちろん、やっていないわけじゃない。ゴールデンタイムのテレビで宣伝し、露出を増やす。一定の効果は期待できると思います。ただ、それでは一過性で終わる。W杯でのラグビー人気が持続可能なものになるのか。限られた資金で、できることはたくさんあります。まずは協会のリーダーシップが大切なんです。

今、代表の試合の日に高校生は自分たちの試合をしています。ニュージーランドではオールブラックスの試合日程を最初にカレンダーに書き込み、それを避けて試合や練習を組む。キックオフが午後2時なら、1時には試合を終えて相手チームと一緒に代表戦を見る。そんな環境が必要です。

自分たちの代表の試合だから、みんなで応援しようということ。ラグビーをやっている人が関心がなければ、他の人が見にくるわけがない。まずは協会主導で代表戦の日は高校生や大学生の試合を組まない。簡単にできます。やらないのは協会の努力不足ですね。

ラグビーをやっている人が、友達を誘う。解説しながら一緒に見れば、よくある「ルールが分からないから」はなくなる。基本お金もかからない。すぐできるファン獲得策ですよ。W杯に向けて、そういう努力から始めるべき。せっかくW杯があるんですから。

◆今泉清(いまいずみ・きよし)1967年(昭42)9月13日、大分市生まれ。6歳で競技を始め、大分舞鶴高ではフランカー、早大でBKに転向した。華麗なステップと正確なプレースキックで、大学選手権2回、日本選手権1回優勝。ニュージーランド留学後、サントリー入り。01年の引退後は指導者や解説者など幅広く活躍している。日本代表キャップ8。