ラグビー・ワールドカップ(W杯)と4大会連続放送権を獲得した日本テレビの関係に迫る「W杯と日本テレビの深イイ話」最終回は、ラグビー愛。19年日本大会の実況を務める慶大ラグビー部出身の安村直樹アナウンサー(30)は、大会成功のために獅子奮迅の働きを見せる。アナウンサー人生を懸けた大勝負に挑む。

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178センチ、90キロの「癒やし系アナ」は、ラグビーへの愛情が深い。連日、担当記者と同じぐらい現場へ足を運び、選手らの一挙手一投足に目を配る。安村アナは「日本大会を機にラグビーを文化にしたい。日本中の居酒屋で侍ジャパンの打順や、サッカー代表の先発を予想するのと同じようにラグビートークが『おつまみ』になるようにしたい」と声を弾ませた。

小3から競技を始めた。医師を目指した浪人時代の唯一の息抜きが、ラグビーのビデオを見ることだった。慶大の“魂のタックル”に憧れ「チャレンジしないと後悔する」と考え、医学部受験を諦めた。慶大総合政策学部に入学し、体重は高3時より10キロ増の90キロで入部。過酷な練習についていけず、一番下のFチーム(6軍)からスタートした。2年時に、SOとして徐々に頭角を現した。「最も印象深い」とする09年12月の大学選手権2回戦。浅原拓真ら擁する法大戦で、初めて黒黄ジャージーを着て秩父宮ラグビー場のピッチに立った。後半残り5分の出場で1回のタックルを失敗。1度の好機をものに出来ず、それ以降、Aチームで出場することはなかった。「これもラグビー。黒黄ジャージーと秩父宮…。それだけで夢をかなえた達成感があったのかもしれない。今でも後悔している」。

ラグビーへの情熱は消えず、12年に同局に入社。既に日本大会開催は決まっていて、試験の志望動機で「W杯の実況がやりたい」と繰り返した。昨年8月にはトップリーグ(TL)アンバサダーに就任し、局の垣根を越えて宣伝活動を行う。「伝えることだけでなく、魅力も発信したい。本番までにやれる準備は全てやる」。情報番組に代表ユニホームを着て出演したり、アナウンスルームのHPで動画「ラグいち!」を新設。TLチームの練習を取材して選手の人柄が伝わる映像を週1回ペースで更新する。民放キー局のアナウンサーとしては異例の取材依頼から編集まで全て1人で行う。「15年大会の五郎丸さんブームをラグビー人気につなげられなかった。大会前の仕掛けが重要で、(世の中が)ラグビーに興味ある状態でW杯を迎えられるようにしたい」。

同局は、日本戦のほか11月2日の決勝も生中継する。安村アナはそのために世界一の準備を目指す。「伝える側の日本代表として、覚悟を持って臨みたい。最後は『アナウンサー人生に悔いなし』と言えるぐらい完全燃焼したい」。癒やし系アナの負けられない闘いが始まる。【峯岸佑樹】

◆安村直樹(やすむら・なおき)1988年(昭63)8月27日、東京都出身。青山学院高等部-慶大。12年日本テレビ入社。ラグビー歴は15年。ポジションはSO、CTB。担当番組は「シューイチ」など。新スタートコーチ資格を取得し、青山学院中等部でコーチを務める。好きな食べ物は肉。178センチ。血液型B。

慶大時代の安村直樹アナウンサー(日本テレビ提供)
慶大時代の安村直樹アナウンサー(日本テレビ提供)