ラグビー用具を紹介する第4回は「スパイク編」。選手の足とグラウンドをつなぐスパイクは、芝を強く蹴り、激しいコンタクトプレーを生むために大事なアイテム。特にFWはスクラムを組む時に体の重心を支える重要なツールとなる。日本代表候補のプロップ三上正貴(30=東芝)のこだわりに迫った。

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13年から日本代表で活躍する三上はスパイク選びを「相棒探しのようなもの」と話す。新型が出ると必ず試すほどで「硬すぎず、足が窮屈にならないようなものを選んでいる。いきなり試合では履かず、練習でならしてから。試合前日には必ず芝の状態を確かめている」とこだわりを持つ。

スパイクの靴底に付いているポイントは、固定式と、ネジで取り付ける取り換え式があり、FWは取り換え式を使う選手が多い。高さが18ミリ以下と規定が広がり、スクラムで芝をしっかりと蹴るために最大限の高さを利用する。一方でBKは瞬時のスピードを必要とし、機動性を重視するため、高さを必要とせず固定式を使う選手が多い。18ミリの取り換え式を使う三上は「昔は16ミリだったけど、長いのが出て、軽くて刺さりやすくなった。芝にフィットしてストレスなく組める。FWの前3人はほとんど取り換え式を使っている」と効果を語る。特に芝の硬い日本のグラウンドでは、BKは固定式でも大丈夫だが、FWは取り換え式を必要とする。

かつては革のポイントを靴底にくぎで打ち付けていた。ところがすり減ってくるとくぎが靴底に飛び出るため、50年ほど前にアルミ製の固定式を日本協会が取り入れた。その数年後、ネジで取り付け式のサッカーシューズが日本で使用されるようになり、ラグビー界にも浸透した。靴底の素材も昔は革だったが、軽さと耐久性を求め年々改良され、現在では質の良くなったナイロンが使われている。最近の大量生産される安価なサッカーシューズを使用する学生も多い。都内でラグビースパイクを専門に販売しているスズキスポーツ代表取締役・鈴木次男氏は「自分たちが作った靴を履いてほしい気持ちもあるが、セールで安い靴を買うのも仕方ない。ラグビーをやってくれるだけでありがたい」と胸の内を明かした。

「スパイクはFWにとってとても大事」と語る三上。ミリ単位の長さでも違いを感じるほど繊細な感覚が力強いスクラムと激しいプレーを生んでいる。【松熊洋介】

取り換え式スパイク(撮影・松本航)
取り換え式スパイク(撮影・松本航)
固定型スパイク(撮影・松本航)
固定型スパイク(撮影・松本航)