トップリーグ(TL)で指揮する海外出身の名将が日本代表、ワールドカップ(W杯)について語るシリーズ最終回は豊田自動織機ロブ・ペニー・ヘッドコーチ(HC=55)です。ニュージーランド(NZ)出身で、母国の最高峰大会ではカンタベリーを4度の優勝にけん引。来日6年目の指揮官はTL全体のレベルアップを日本代表躍進の一因に挙げ、FW第1列に期待を込めました。

豊田自動織機のトレーニング室で笑顔を見せるロブ・ペニー・ヘッドコーチ(撮影・松本航)
豊田自動織機のトレーニング室で笑顔を見せるロブ・ペニー・ヘッドコーチ(撮影・松本航)

昨季限りでNTTコミュニケーションズ(コム)を退団したペニー氏は今季、トップチャレンジリーグ(TL2部)の豊田自動織機を指揮する。欧州クラブなどに興味を示されたが、日本に残った理由は「長い期間を見て、ポジティブな文化作りをしたい」。愛知・刈谷市の練習場から日本代表を見た視点も長期的だ。

ペニー氏 私が日本に来て6年(目)。日本のラグビーはとても変わりました。特に社会人ラグビー。当時、上位6チームはだいたい決まっていたでしょう。それが、今はどこのチームが上位に来てもおかしくない状態になっています。その部分が日本代表につながっていると考えています。

ペニー氏がNTTコムのHCに就任したのは14年。その前年度の6強はパナソニック、サントリー、神戸製鋼、東芝、ヤマハ発動機、トヨタ自動車だった。そこで13位だったNTTコムは16-17年シーズンに5位へと躍進。リコーやキヤノンなども近年、当時の6強に負けじと躍進している。

ペニー氏 スキル、テクニック、戦術…と全てがレベルアップしている。下のチームとの差が小さくなり、上のチームにも刺激になる。もちろん(元NZ代表の神戸製鋼SO)カーターなど世界的な選手がプレーしているのも一因。他国からも日本のラグビーが、だんだんとリスペクトされてきています。

その上で日本代表におけるキーポイントを挙げた。

ペニー氏 日本人特有で強いポジションはフロントローであり、フッカー。そこは外国人と変わらないぐらい、対等にやり合えるところだと感じています。

プロップには稲垣啓太(29=パナソニック)、韓国出身で中学から日本で過ごす具智元(グ・ジウォン、24=ホンダ)らが名を連ね、フッカーにも3大会連続W杯出場が懸かる堀江翔太(33=パナソニック)ら国内で育った選手が多い。ペニー氏は来日前の12年から2季、アイルランドのマンスターでHCを務めていた。日本がW杯1次リーグ第2戦で挑む格上のアイルランドも熟知する名将は、客観的に力関係を分析した。

ペニー氏 私が教えていた頃のアイルランドの選手は、日本人より大きく、サイズとパワーがあった。ただし、日本が今の(W杯に向けた)プログラムをきっちりと遂行していけば、スクラムでも互角にやり合えるでしょう。

最後にはNTTコム時代、社会人1年目から指導したNO8アマナキ・レレイ・マフィ(29)について口を開いた。マフィは昨年7月、レベルズ(オーストラリア)の同僚選手を暴行した疑いで一時身柄を拘束され、自宅謹慎。司法手続きは長期化しており、十分な反省が認められたため、今年3月から日本代表活動に加わった。プレーのレベルに関しては、ペニー氏がしっかりと太鼓判を押した。

ペニー氏 彼は素晴らしいアスリートなので、ブランクは全く心配していない。ジャージーを着て試合に出れば、結果は出ると思います。(主将で東芝の)リーチとマフィの2人は、ワールドクラスの第3列。彼がプレーできる可能性があることを、信じています。【松本航】

◆ロブ・ペニー 1964年4月27日、NZ・クライストチャーチ生まれ。現役時代は主にNO8。35歳で引退。06~11年はカンタベリーでHC。12年からアイルランドのマンスターでHCとなり、13-14年シーズンは欧州3大リーグのプロ12(現プロ14)年間最優秀コーチ。14年からNTTコムを指揮し、今季から豊田自動織機。