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涙の敗北 関東9連覇ならず
早大に残り2秒 FGの前に敗れる

SCORE
チーム1Q2Q3Q4Q
法 大1024
早 大1026

得点経過
時間 チーム プレイヤー プレー ヤード TFP G/NG
1Q 7:35 W 波木 RUSH 3 K G
2Q 3:01 H 柴田 FG 31 - -
11:03 H 小沼 RUSH 39 K G
3Q 7:40 W FG 28 - -
11:58 H 伊藤喜 RUSH 9 K G
12:00 W 長岡 KOR 95 K G
4Q 1:27 H 小沼 RUSH 42 K G
7:07 W 波木 RUSH 5 K NG
12:00 W FG 48 - -
スターター
TE87日田 裕之
LT73吉澤 拓哉
LG66鈴木 智也
70山口 孝文
RG55工藤 大輔
RT77宮内 武一
WR25久米 康二郎
QB17桑野 智行
UB22小沼 裕次郎
TB29伊藤 喜章
SE円谷 望
10柴田 裕樹
DE曾沢 俊太
DT79西川 岳志
DT59久保木 鉄平
DE95宮下 友佑
LB57鷲井 秀剛
LB中井 勇介
LB47二上 雄介
CB26川畑 勉
CB27小井出 智啓
SF21鹿島 祐太
SF23清水 新
30井芹 一

 11月23日、法大トマホークスのシーズンは突然幕を降ろした。残り2秒からのFG。まさかの逆転だった。関東9連覇に臨んだ法大だったが早大の勝利に対する執念の前に屈した。準決勝敗戦チーム同士の抽選で決まる札幌ドームでのシトロンボウル出場は明大に決まり、今年のチームは幕を閉じた。

 時計は残り2秒を刻む。法大の2度のタイムアウトを終え、早大・キッカー神は遠方のゴールとの距離をじっくりと目測し大きく息をついた。どんよりと曇ったフィールドに響く「早稲田」コール。法大側スタンドは神が48ヤード先に視点を定めていることをじっと見つめることしか出来なかった。「このプレーで決まる」主将鷲井の胸中にも『敗北』がちらつく。チーム全員がディフェンスチームの奮起を期待しフィールドに立つ選手達を怒鳴りつける。
 勝利しても何一つ表情を変えず憮然とベンチに引き返す選手達。9年間見なれた光景を誰もが思い浮かべた。連戦連勝。関東では圧倒的な力を誇ってきた。敗北を喫した選手達の姿は決して想像できなかった。「一戦一戦」主将鷲井は常にそう口にし続けた。「甲子園で勝つためにはパスが絶対に必要」昨年甲子園で敗れたQB桑野は語った。「負けて始まったチームは違う」昨年学生コーチを務めたミルズ杯QB井川は今年のチームの背負う強さを確信していた。
 甲子園ボウル・関学大戦の敗北から鷲井率いるトマホークスは始まった。甲子園でのリベンジを胸に誓い、常にチームに足りないものを貪欲に追い続けた。全ての部員が参加し、関わりあい、毎夜夜中までミーティングを重ねる。決して妥協することは無かった。例年にはない様々な苦悩も経験した。春のオープン戦専修大戦、4年ぶりに関東で敗戦を喫し、ヨコハマボウルではシルバースターにコテンパンにされた。ぶつかり合うフィールドの上で自分達に足りない何かを一つ一つ掴みながら確実にチームは成長していた。
 ハドルは解けた。橙と臙脂が法政陣32yを境に整然と向かい合う。運命を決する最後のプレー。スナップした楕円球は早大ホルダーの手元に確実に収まる。キッカー神は右足を思いきり振り抜いた。橙の戦士達を楕円球は大きく越えていった。楕円球は7.8ヤードの隙間に吸い寄せられていく。球は折からの追い風に乗りフワフワと舞った。2本のポールの間に辿り着くまでフィールド上の時はゆっくり流れた。時は直ぐにいつものリズムを取り戻す。橙の選手たちはフィールドに崩れ落ちた。
 法大ベンチは静まり返った。信じられない光景に法大応援席は手で顔を覆う。想像したことのない光景が目の前に広がった。敗北がフィールドの残したものは選手たちの崩れ落ちる姿だった。8年勝ちつづけた関東での敗戦。涙を流しながら引き上げる法大の選手達。ロッカーに戻り長いミーティングをした。ミーティングを終えた選手たちは一様に涙を流していた。先輩達が味わった悔しさを後輩に言葉にして伝える。先輩達はこの悔しさを忘れないように後輩達に全てを残す。
 例年のチームと同様、春見せる顔は一戦一戦戦っていく中でみるみるうちに近寄りがたいオーラを発した。「一戦一戦」主将鷲井がいつも語るその言葉のように、一つ戦うごとに彼らの顔はたくましく、何かを感じ取ると共に表情はより深みを増した。背負うものの大きさ、自分達で築き上げてきたチームへの誇り、他のどのチームにも負けない、暖かく、そして厳しい雰囲気がこのチームにはある。どの選手に聞いてもいつもその言葉には遠慮は無くそれぞれに感じていることを自信を持って話してくれた。我々に語ってくれる言葉は、彼らの信頼関係の中では当然のように共有され、それぞれの気持ちの中は選手同士では全て理解されていた。彼らの中にはいつも強い信頼がある。突然の終わりを迎えたトマホークス。連覇は途切れてしまったが、トマホークスと言うチームはここで経験したことを絶対に無駄にしない信頼がある。来年新たに始まるチームはここで感じたことを胸に新しい歴史へと変えていくはずだ。連覇と言う歴史は途切れたが、法政大学トマホークスの良き伝統、チームとしてあるべき姿は引き継がれていく。

試合展開


前半

 法大のリターンで始まった試合、桑野の25yキープで幸先良いスタートを切った法大、小沼のダイブもゲインを奪いライン戦は早大を圧倒する。桑野のパスも冴えをみせるが、レシーバー蔵重がキャッチミス。攻めあがるもパントで攻撃を終える。
 対する早大のドライブは波木のパスから始まる。惜しくも失敗に終わったが、ランを軸に攻撃を進める上でパスを法大ディフェンスに印象付けた早大。続いて長岡のラン、波木のキープ、そして中央の神のダイブでロングゲインを奪う。エンドゾーン間際まで攻めこまれた法大、二上、鷲井のロスタックルでモメンタムを引き寄せ掛けるが、早大のランは止まらない。4thダウン3y、先制の好機を迎えた早大は最初のタイムアウトをとった。この決定機に早大が選択したのは波木のキープ。ストロングサイド右オープンに走りこんだ波木は難なくエンドゾーンまで飛びこみTD。互いに欲しかった先制点を早大がもぎ取る。
 法大はTBを中心に攻撃を組み立てる。伊藤、長村が着実にゲインを奪う。しかしライン戦は優位に立っていた法大、UB小沼のダイブが冴えを放ち、この試合最もゲインを奪うキープレーになる。パスも的確に決め相手に的を絞らせない。相手陣15y付近まで攻めあがった法大だが、ここで早大ディフェンス陣が踏ん張りを見せる。LB亀田のロスタックル、法大の攻撃の柱だった伊藤喜のランを抑えこみ法大攻撃をFGに抑える。FGは今季キッカーを務める飯塚が確実に決め7−3に。早大ディフェンスの踏ん張りになかなか攻め切れない。
 続く早大のシリーズ、法大にとって絶対に出してはならない神のダイブが再びビッグゲインを奪う。立ちあがり不調だった波木のパスもレシーバー吉田のファインプレーで大きくゲインを奪い、早大が再び法大エンドゾーン間際まで攻めこむ。ここで奮起したのが法大主将鷲井だった。2度のロスタックルで早大をFGに追いやりそのFGも神が失敗。法大が大きなピンチを防ぎモメンタムを掴む。
 残り4分47秒、法大はディフェンスから掴んだモメンタムをしっかりオフェンスに繋げる。TB陣、QB桑野が着実にゲインを奪う。前半何とかリードして終えたい法大。このシリーズの攻撃は慎重になる。3rdダウンで一度タイムアウトをとった法大は直後のプレーに小沼の中央のランを選択。ここまでTB、QBのランに絞っていた法大。ライン戦を制していたこともあり小沼が一気にエンドゾーンまで駆け抜ける。39yの独走TDで法大が10−7とリードし前半を終える。
 前半法大は3つのドライブのうち二つを得点に繋げ、早大は3つのドライブのうち1つがクウォータータイムであったため実質2つのドライブを1つをTDに、1つがFGNGとする。良好合わせて実質5つのドライブと両校オフェンスが地道に進める。緊迫した展開となった。

後半

 後半は早大のレシーブ。神、泉、長岡、ランを中心にしたドライブは一歩一歩法大陣に攻め入る。波木のキープは3Qに入っても止まらない。ランだけで大きくドライブされたかと思うと再びWR吉田へのロングパスが決まりエンドゾーン深くまで攻め入る。法大が何とかFGまで追いこむが、キッカー神が難なく決め、後半最初のシリーズで早大が10−10の同点に追いつく。このドライブで早大は7分49秒の時間を費やし、法大としては避けたかった早大のタイムコントロールに見事にはまる。
 早大にタイムコントロールを許す法大だが、決してオフェンス陣が攻めあぐねているわけではなかった。ライン戦は終始優位にたち、ランは確実にゲインを奪った。4thダウンギャンブルを一度迎えるが決して焦りは無かった。確実にゲインを奪える伊藤喜のランでダウンを更新。小沼のダイブも最後までゲインを奪い、エンドゾーン間際まで攻めこむ。最後は伊藤喜の左オープンランでTD、追いつかれた法大だったが、すぐさま早大を突き放す。しかし、ここで思わぬ落とし穴があった。K柴田のキックをレシーブした早大長岡が右サイドをかけあがる。追いつく法大キッキングチームだったが掴みきれず長岡は独走。そのままエンドゾーンに持ち込んで追いつかれたすぐさまのビッグプレーで早大が同点に追いつく。3Q両チーム合わせて僅か2つのドライブとキックオフリターンTD。両チームのそつの無い攻撃で試合は更に引き締まる。
 4Qは法大のレシーブから始まった。追いつかれた法大が再び早大を突き放すのには大した時間を必要としなかった。この日最もゲインを奪える小沼のダイブがここでも爆発。42y独走のTDで24−17と再び早大を突き放す。先制こそ許したがその後は法大が常にリードする展開。地力では法大が圧倒していた。しかし、早大は最後まで自分達のフットボールを徹底した。波木のキープ、神のダイブ、そして時折見せるWR吉田へのパスは最後まで法大を苦しめ、時間をかけて法大陣に攻め入った。それに対しリーグ戦で平均失点7を記録した法大、エンドゾーン間際でこれまで同様踏ん張りを見せる。4thダウンまで追いこんだ法大、しかし、この場面を勝負と見た早大は4thダウンギャンブルに臨む。選択したプレーはパス。パスは右サイドの構えた早大レシーバーに向けて放たれた。カバーしていたのは法大主将鷲井。鷲井がキャッチに行ったレシーバーにプレッシャーはくしくもパスインターフェアを取られ、早大に土壇場でオートマチックファーストダウンを許す。相手のペナルティーから得たチャンスを早大は、波木のキープでTD再び法大に追いつくかと思われた。しかし、ここで法大の勝利への執念がビッグプレーを呼ぶ。決まれば同点のTFP神のキックを法大副将・西川がブロック。24−23、大きな1点を防ぎ、残り4:44秒。法大が堅実なドライブを進めれば勝負は決まる。法大はランで時間を進めたい所だった。2度のダウン更新で勝利は更に近づいた。しかし、ここで桑野が選択したのはパス。左レシーバーの蔵重への短いパスだった。ランに警戒が集まる早大ディフェンスの裏を欠くプレーだったが、これがミスにおわる。そのシリーズは3回の攻撃でダウン更新できず4thダウンに。法大はパントを選択し、最後のディフェンスにかける。井芹のパントは早稲田陣4yに転がり、ディフェンス陣にとっては絶好のフィールドポジションを確保する。時間は残り50秒。この僅かな時間で早大はエンドゾーン、又はフィールドゴールに陣を進めなくてはならない。法大ディフェンス陣の力を考えると法大の勝利は確実なものにも思えた。しかし、この試合法大が手を焼きつづけた早大QB波木はまだまだ死んではいなかった。この試合始めて構えたショットガンフォーメーションから放たれたディープパスは早大レシーバーを的確に捉えた。スパイクを挟んで、再びパスに。またしても決まり法大陣32yまで詰め寄る。残り2秒。ここで早大は神がいつもよりも後ろに構えた。この試合2本のキッキングミスをした神。決してキッカーとして特筆した力を持っているわけではない。アベレージのキッカーとしては48yと言う距離は狙うには遠すぎる。このキックで勝敗が決まることは明白だった。法大は2度のタイムアウトを取り、早大にプレッシャーをかける。時間を置いてこの一つのプレーにかける気持ちを確認した法大。ラインがぶつかり早大神のキックは高く舞いあがった。2本のポールの間をボールはすり抜け勝敗は決した。

コメント

大森監督:「ここで負けるとは思っていなかった。早稲田の方が勝ちに対する執念があった。負けるべくして負けた。結果として負けたのだからからやはり力を出し切れなかったのだろう。今年のチームは期待度としては高かっただけに勝利への執念を挑戦者である早稲田のほうが持っていた。ミスが多く、流れを早稲田に持っていかれた。隙があったかもしれない。最後のキックの前に2度タイムアウトをとったのは間をいれてプレッシャーをかけるため。最後のキックは祈るだけだった。入らないでくれというのが本音。これで終わったかなという気もした。キッカーが優秀だった。ゲームと言うのは生き物だから相手が勢いのある時は我慢しなくてはいけないし、攻めている時は一気に攻める。先制点を取られたからといって焦りは無かった。ゲームにあたって悔やむことはない。一番悔やんでいるのは選手たち。よくやってくれた。悔やむことがあるとすればV9できなかったこと。V9はコーチのほうが意識していただけで選手は意識していない。やはりV9はしたかった。勝ち続けるのは大変。決して関西を意識していた訳ではない。意識してもしょうが無いことだから。一つ一つ戦っていくというつもりで戦った。今年のチームはオプションを脱却していろいろなチーム作りをやってきた。新しい取り組みが出来た良いチームだった。しかし、結果として負けたのだから何も言えない。一概に歴代のチームとは比較はできない。今年はいいチームだった。プレーにバリエーションができたしチームの雰囲気もよかった。鷲井はよくここまでやってくれた。来年も選手に合わせたチーム作りをする。パスが増えるかもしれない。選手はよくやってくれた。ここまでこれたということに対して自信を持ってほしい。うちは負けを知らない選手が多かったので、負けの悔しさを知るのも必要なこと。来年はもっと強くなる。来年がんばろう。」
青木助監督:「油断していた。弱いから負けたただそれだけ。今年のチームは甲子園までいけると思っていた。」
鷲井主将:「勝ちへの執念が足りなかった。危機感が足りなかった結果だと思う。早稲田の気迫はプレープレーで感じた。揺さぶられても浮き足立ってバタバタしたわけじゃない。スカウティングはしっかりしたし、動揺はなかった。結果としてうまく出来ていなかったということになるだろう。先制されても焦りはなかった。リターンTDはうちのリターンの弱い所をつかれた。こちらのミスもあったが痛かった。全体としてミスが多かった。足りないものがあったかもしれない。キャプテンとして苦労したことはなかった。やり残したことは日本一を取れなかったこと。勝つためにチームはスタッフ、選手が力を合わせないといけない。トマホークスというチームでできることがたくさんある。と言うことを最後のミーティングでは後輩達に話した。」
桑野選手:「明日からも練習するつもりだった。負けたのはいろいろな要素があるとおもう。油断しないように、早稲田に負けたら終わりと言う気持ちを持って臨んだ。やるべきことは出来ていたと思うし、早稲田の上を行けるプレーを用意していた。全力100%を出して早稲田にプレッシャーをかけたかった。中だるみにならないように気をつけた。パス練習する割合を増やして春から取り組んで来た。悪いとまでは行かなかったが、ミスが積み重なってしまった。不完全燃焼です。早稲田はうちを研究してきていたし、これが最後、崖っぷちと言うプレーをしていた。
回りに助けられて成長した。井川さん、中島さんが心配して電話をかけてくれた。助けてくれた人がたくさんいた。」
工藤選手:「チーム全員が勝ちたいと思っていた。チームの実力が足りなかった。完敗。今年は練習も勝ちたいと言う気持ちを持って例年以上に取り組んだ。後輩達には自分達をしっかり見つめなおして頑張って欲しい。」
西川選手:「完敗です。浮かれていた部分があったのかもしれない。実力が無かったのだと思う。」
日田選手:「悔しい。勝ちつづけている気持ちの緩みがあったのかもしれない。次の試合からしっかり出られる予定だった。フィールドにいられなかったことは複雑。後輩達にはこの悔しさを忘れないで欲しい。」



クラッシュボウル展望
法大優勢は揺るがずも専大、早大が追う

関東大学選手権 準決勝 駒沢陸上競技場

第1試合

法政大学トマホークス−早稲田大学ビッグベアーズ 10:45

第2試合

専修大学グリーンマシーン−明治大学グリフィンズ 13:30

関東大学選手権 決勝 さいたまスーパーアリーナ 14:00

 11月23日、法大トマホークス関東9連覇へむけていよいよ関東大学選手権・クラッシュボウルが開幕する。法大は関東大学リーグではプレーオフを含め37連勝中。今季も危なげなくリーグ戦を戦い9連覇へ向けて他校を圧倒している。しかし、今春にはオープン戦で専大に敗れ、他校の法大対策も高まりつつある。法大に専大、早大、明大の3校がどれだけ追いすがれるかが焦点となるだろう。

今季の法大

オフェンス

 法大は今季も看板のRB陣が健在。中でも伊藤喜、長村のTB陣の活躍が目を引く。昨年の甲子園ボウルでも活躍した両選手、経験スピードとも申し分無し。他校にとって最も脅威となる存在と言えよう。法大オプション攻撃のカギUBも小沼が安定感を見せる。例年ほどUBのダイブプレーが出てはいないが、破壊力は例年と変わらず常に爆発力を有する。それに加え、法大のQB史上トップクラスと言えるQB桑野のキープの能力を考慮するとラン攻撃のスキはない。懸念されるのはスピードは十分といえるが、例年に比べると力で押しこむ法大らしさに欠ける点だ。昨年、一昨年は3rdDOWNショートの場面でUB白木のダイブというキープレーで確実なダウン更新が可能だった。リーグ戦では接戦を経験していないだけに、ロースコアゲームになった時確実にダウン更新出来る「力」、その点に不安を抱えるかもしれない。
 今季の法大はランにとどまらないのが強み。注目されるのは確実に上昇しているパスアタックだろう。QB桑野の右腕から放たれるパスは昨年から明白に成長している。それを確実に証明するのが効果的なパスを表す数値"パスレイティング"の異常なまでの高さだ。規定試数には足りなかったがその数字は200を超えた。この数字は関東1位に相当する。過去の法大QBと比較しても岡本、井川の甲子園を制覇したQBに引けを取らない。プレーオフ出場4校でなんと1試合当たりの平均獲得パスヤードでは法大が1位。全校ランに比重を置くチームではあるが、稀有な状況と言える。パス力の向上はQB桑野の成長ももちろんだが、レシーバー陣の成長が著しいことも重要だ。法大のパスキープレーとも言えるTEへのパスは、エース・日田が欠場している間も井芹が大活躍を見せた。レシーブ能力は関東隋一の日田に加え、本来控えの井芹の成長は法大にとって攻撃の厚みを増した。今季はダブルTEにも取り組み、日田、井芹、そして植田の3人のTE陣が更なるパスの力を増す決定的な要因となる。WR陣も圧倒的なスピードを持つ円谷、久米、そして今季急成長を遂げた蔵重が球際での強さを増した。日大レシーバー陣を彷彿とさせるスレスレのキャッチを今季何度も見せた。確実にゲインを奪えるショートのパスだけではなく昨年、そして今春には見られなかったディープパスの数も圧倒的に増えている。攻撃のバリエーション、精度が春と比べ格段と増しているのは明白だろう。中央のダイブ、オプション、オープンラン、パス、他校が警戒しなくてはならない攻撃は数知れない。今季の法大オフェンスは想像以上の破壊力を持ち合わせる。
 オフェンスラインは昨年のメンバーC山口、OT吉澤、宮内、OG鈴木が残り安定感は抜群。伝統のスピードラインも関東ではパワーも圧倒、スキは無い。ライバルと見られる早大、専大のDL陣もフィジカルにおいて力を持ち、専大に関しては春季に抑えこまれた。しかし総合力としてみれば法大が上回ることは歴然。ライン戦を制しオフェンス大爆発を導いて欲しい。
 そしてプレーオフと言えば、法大のこれまで出なかったプレーが続出する。リーグ戦ではほとんど出さないリバースプレー等まだまだ爪を隠すオフェンス陣に期待したい。

ディフェンス

 法大ディフェンスの今季の安定感は目を見張るものがある。平均失点は7と1TDしかとられない計算になる。単純にオフェンス陣が2本取れれば勝利する計算だ。喪失ヤードにおいては他校と差は無いが、この数値には早々に2本目を出す法大ディフェンス陣の数値が反映され、ベストメンバーで常に臨むことが出来れば安定感は更に増す。この安定感を支えるのはDL、LBのディフェンスフロント陣。DL陣は西川を中心に、久保木、会沢、野村、宮下、清水、長谷川、杉山、杉本と、一本目で戦える選手が数多く揃う。どの選手も一対一に強く選手層の厚さは学生界NO1と言っても良いだろう。LB陣は春季ケガで戦線離脱していた中井が復帰。主将・鷲井と共にLB陣を引っ張る。二上、三溝ら下級生も成長しDLと一体となった中央のランディフェンスは関東のチームでは早々にはゲインを奪えないだろう。ライバルとなる早大では神、専大では工藤の両フルバックのダイブは両校にとってキープレーといえる。接戦続きのBブロックでは彼らのダイブがダウン更新につながり、タイムコントロールしてきた。他校にとって法大に勝つためにはロースコアゲームに持ちこむことは必須。中央のランに圧倒的な強さを持つ今季の法大だけにそう簡単に相手のフットボールはさせないだろう。
 DB陣はSF水上の復帰が待たれるが、川畑を中心とするCB、そして水上の穴を埋めたSF清水、今季急成長のSF鹿島が今季幾度もインターセプト、パスカットでピンチをすくった。昨年DFの柱だった塚野兄弟が抜け、一見ディフェンスの威圧感と言う意味では抜けた感があるが、スピード、リアクションは昨年に引けを取らない。しかし、毎年課題となるパスディフェンスは今季も一抹の不安を抱える。リーグ最終戦の東大戦、関東学院大戦では終始ショート、ミドルのパスを出された。パス攻撃と言う形式上決められることは仕方が無い部分はあるがディフェンス陣一体となってラッシュ、カットと相手パスに出来るだけプレッシャーをかけたいところだ。

関東9連覇・甲子園への道 クラッシュボウル展望

 法大の初戦の相手は早大。4年前、現在の連勝記録の始まりは早大戦の敗戦から始まった。通算の対戦成績は何と早大に一つ負け越している。決して分の良い相手とは言えない。
 リーグ戦の両校の戦い振りを見ると法大の有利は揺るがない。ライン戦、バックス力どちらをとっても法大が圧倒すると言っても良いだろう。法大と対戦するチームにとってはまずは中央のラン、オプションを止めることが絶対だ。しかし、早大ディフェンス陣は一発での爆発力こそあるが、リーグ戦を通してランに対するディフェンス力に強さがあるとは言い難い。リーグ戦最終戦の東海大戦では勝利こそ収めたが常に中央のフルバックダイブを出されつづけた。法大のお家芸ラン、オプションだけでも早大を圧倒しかねない。早大としてはLB、DL一体となったディフェンスで法大のランをケアしたいところだ。
 対する早大オフェンスはやはりQB波木のスクランブル、オプションキープが脅威となる。波木のQBとしては並外れた走力は常に一発TDの危険性を潜む。法大ディフェンス陣としては僅かなタックルミスが命取りとなる。主将・鷲井も「波木」という名前を上げて注意するほどの爆発力。決して油断は許されない。そしてもう一つの早大のキープレーはFB神のダイブ。スピード、捕まえられたからのセカンドエフォート、FBとしての素質を十分兼ね備える神のダイブが出ると試合は早大ペースになりかねない。しかし、今季の法大は中央のランに対し絶対的な強さを誇る。一筋縄では早大もゲインを奪えないだろう。早大としては波木のパスで法大LB陣の動きをコントロールしダイブを出したいところだ。しかしスキの無いディフェンス力を誇る法大にとってはいつも通りできれば守りきれるはずだ。
 準決勝を勝ちあがると決勝にはおそらく専大が勝ちあがってくることが予想される。専大は春季オープン戦で敗れた因縁の相手。近年法大の圧勝が続くクラッシュボウル決勝戦だが、今年は法大にとって厳しい戦いが予想される。
 春季オープン戦で敗れたとはいえ、総合力での法大の圧倒は否めない。法大として警戒しなくてはならないのは専大の圧倒的なディフェンス力と工藤、小島の専大RBのランだ。専大ディフェンス陣はDL、LBとも関東では屈指の力を誇る。DLは全員がサイズ、スピード申し分無く、LB陣は廣田を中心に驚異的なスピードを持つ。春季敗れた時はDL、LB一体となったディフェンスに法大のランが完全に止められた。専大は法大のランを相当研究し、法大対策は万全。法大オフェンスにとってはオープン戦の二の舞は絶対に避けたい。専大ディフェンスに対する法大の対策としては、まず第一にオープンに攻撃を展開し、DL、LB陣を左右に振り分けることだろう。選手層が薄く、決勝では15分Qとなるため法大得意の消耗戦を挑むことが第一となる。今季の法大TBの戦力を考えるとオープンランは僅かなタックルミスが一発TDにもつながる。そしてもう一つは桑野のパスだろう。専大のランディフェンスの要は巧みなスピードを持つLB陣。彼らの注意をパスにいかに引きつけられるかがカギとなる。パスを相手に印象付けることで法大のランが続々出るようになるだろう。
 そして専大のRB陣工藤、小島のランに対するケアも重要となる。専大オフェンスは準決勝で対戦する早大に比べると爆発力にはかけるかもしれない。しかし、工藤の確実なゲインと、小島のスピードはタイムコントロールに十分な力を持つ。いかにダウン更新をさせないかが法大にとって大きな課題となるだろう。3rdDOWNショートを止めて法大がディフェンスから流れを作りたいところだ。専大に関しても法大と同じくパスがいかに決まるかがゲーム流れを大きく左右する武器となるだろう。ブリッツをかけて専大QB久野のパスを狂わせることが重要となる。
 今季驚異的な粘りで勝ち抜いてきた明大も決して侮れる相手ではない。リーグ戦では42−0と圧倒したが、選手層も厚く、チームバランスと言う点では4校でも上に位置づけられる。ただ、専大が勝ちあがってきた場合と比較すると法大にとってやりやすい相手であることは否めない。
 選手たちは口を揃えて「早稲田、専修とやりたかったと語る」。それぞれに因縁を持つ相手だけに法大選手たちの気迫は並々ではない。「他のチームとは目指すところが違う」と語るTE日田、「通過点」と言いきったRB伊藤喜。12月1日、必ずアリーナに法大の勝利の雄叫びが響き渡る。


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