プレーバック日刊スポーツ! 過去の7月26日付紙面を振り返ります。2001年の3面(東京版)は甲子園出場を決めた日南学園・寺原隼人投手(現ソフトバンク)でした。

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<高校野球宮崎大会:日南学園8-3宮崎日大>◇2001年7月25日◇決勝◇サンマリンスタジアム宮崎

 高校生最速の155キロを誇る、日南学園(宮崎)の寺原隼人投手(3年)が甲子園にやってくる。

 8月8日に開幕する全国高校野球選手権宮崎大会の決勝戦で、宮崎日大を8-3で破り3年ぶり3回目の夏の甲子園出場を決めた。寺原は3失点したものの、150キロ速球で9奪三振。今秋のドラフト会議で1位指名されるのは確実で、西武松坂らが記録した甲子園での最速、151キロを更新するのも間違いない。

 寺原が高々と両腕を天に突き上げた。しかし南国の怪物は、あくまで冷静。マウンド付近に広がる歓喜の輪から離れ、チームメートの喜ぶ姿を横から笑みを浮かべて見守った。「ようやくここまできた。ここまで頑張ってきてよかったと思います」。これから始まる甲子園へ胸の高ぶりを抑えるように、口元を引き締めた。

 18日の日南振徳商戦(3回戦)で日米約30人のスカウトの前で15三振を奪いノーヒットノーランを達成。前日24日の日向戦(準決勝)では今大会最速の152キロをマークした。連投となった決勝でも150キロの速球で、全国デビューへ強烈なデモンストレーションを行った。初回。先頭打者への3球目が、150キロの数字をたたきだした。

 「ブルペンから調子はよかったです。最初は少し緊張気味だったけど、球のキレも80点ぐらい。コントロールもよかった」。4回2本の三塁打と自らの暴投などで2失点。1度は同点に追いつかれたが、前日(24日)の準決勝同様、中盤からスピードへのこだわりを捨て高速カーブ主体に組み立てを変更。5回2死からは4者連続三振を奪って、宮崎日大の反撃の芽を摘んだ。

 甲子園にかける意気込みは人一倍強かった。6月の市船橋(千葉)との練習試合で驚異の155キロを記録したが、今大会は勝利に徹した。プロのスカウトからも即戦力のお墨付きをもらっていても「全国での実績がないので、まだ(プロでやる)自信がない」と大会前には口にしていた。寺原にとって甲子園が、自分の力を測る舞台だった。

 甲子園では勝利とともに、県大会では封印していたスピードへの挑戦も始まる。予選前から宣言していた西武松坂を超える甲子園最速151キロの更新に挑む。「松坂さんの甲子園の投球はあまり記憶に残ってません。甲子園では日南学園の寺原をアピールしたい。普通にやれば大丈夫だと思います。152キロは絶対に出します」。寺原は念願の甲子園の舞台に立つ日が待ち切れない様子だった。

 ◆西武松坂 日南学園は投手陣がいいので甲子園に出られると思っていました。寺原君のことは、実際にテレビなど映像を通じて見たことはありませんが、新聞などで知っています。僕の記録(151キロ)を抜く? それは抜くでしょう。予選で152キロも出ているんですから。甲子園で見るのが楽しみですね。

 ◇スカウト太鼓判 寺原の甲子園デビューをプロのスカウトも楽しみにしている。宮崎大会全登板をチェックしたダイエー山崎スカウトは「今日は昨日より球が低めにきていた。スピードガン以上に球にキレがあった」と評価。松坂、新垣の151キロ超えも問題なくクリアできると太鼓判を押す。巨人松本スカウトも「連投でこのピッチングができるのだから、松坂の記録を超えるのも順当なところ」。横浜岩井スカウトも「普通にやれば間違いなく超える」とみている。今大会はメッツ、マリナーズなど大リーグ4球団と日本の全球団の16球団が視察した。甲子園にも寺原を狙うスカウト陣が集結しそうだ。

※記録や表記は当時のもの