ドジャースのフロントで国際営業などを担当する佐藤弥生さんが先日、都内にあるスポーツ・ビジネス・アカデミー(SBA)で公開講座を開いたので行ってきた。「メジャーのスポンサーシップ最前線」というテーマで、最近のメジャー球団のビジネス面でのトレンドについての講義が行われ、非常に興味深かった。現在のドジャースはメジャー屈指の資金力を誇り、球団の資産価値も上昇してヤンキースに次いで球界2位となった。それにともなってビジネス面も活性化しており、前田健太投手の入団を機に日本市場への進出も意欲的に推進している。佐藤さんも「この球団に来てから今が最高の忙しさ」という。

 米球界で活躍する日本人は最近増えているが、メジャーリーグ球団フロントの第一線で働く日本人女性というのは、恐らく佐藤さん以外にはいないだろう。メジャーのフロントで日本人が働く上で有利な点はあるかというと「米国の組織で働いているので、日本人だからと特別扱いされることはないです。日本人だから得したということもないし、逆にハンディになったこともない」とか。女性である点については「きめ細かいサービスが得意な点は女性ならではなので、そこは強みになる」という。

 佐藤さんが最初にドジャースに入ったのは、野茂英雄氏、石井一久氏、木田優夫氏が所属していた03年のこと。その後、一時球団を離れ、黒田博樹投手が入団した08年から再び球団に戻った。しかし佐藤さんが球団から大きな信頼を得るきっかけとなったのは、日本人選手絡みの仕事ではなかったという。それは5年前、まだ現オーナー陣が就任する前で、経営が苦しく、当時のオーナーはファンから総スカンをくらい、球場に閑古鳥が鳴いていた時期だった。佐藤さんは来場したファンに配布するギブアウェイプレゼントの企画を任されることになり、ハロー・キティ人形の配布を企画し、これが大人気で爆発的な観客動員につながり、それによってたちまち評価を上げたそうだ。

 佐藤さんの活躍もあり、ドジャースは今季、マエケン絡みのプロモーションや宣伝活動計画も着々と進んでいる。すでに森永製菓のハイチュウが、球場内にあるキッズゾーンのスポンサーになることが決まり「ハイチュウ・プレーゾーン」と名付けられることになった。ドジャースタジアムが、日本のファンにとってさらに身近な場所になりそうだ。

【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)