現地1月30日、MLBは不正アクセス事件を起こしたカージナルスに対し、被害を受けたアストロズに今年のドラフト指名権56位と75位の譲渡と200万ドルの賠償金を支払うよう命ずる処分を下した。この処分に対し、MLB全体に影響が広がっているようだ。

 事件はカージナルスの育成部門の責任者だったクリス・コレア元スカウト部長が犯したもの。2013年と2014年に不正にアストロズのデータベースにアクセスし、トレードやスカウトに関した機密情報を得ていたもの。ハッキング事件として大きな騒ぎとなり、コレア元部長に対して連邦裁判所は昨年7月、禁錮3年10月と賠償金28万ドルの判決を下している。

 さらに今回MLBがカージナルスの責任に対して処分を重ねた形だ。この処分が今後同様に各チームの機密情報に不正アクセスするような動きへの抑止力となるかが注目されているのである。

 スポーツ専門局ESPNの電子版は31日付の記事で、匿名のナ・リーグ重役による「『なんだ、指名順は高くない、たった200万ドルだ、さあやろう。処分は重くないから』などと言う者はいないと思う。彼は今刑務所に入っている。一生ベースボールで働くことができない。これはカージナルス全体にとって恥辱となった。1巡指名権を失うべきだとか罰金に関して論ずることはできるが。処分はこうしたことが再び起きないようにするのに十分だと思う」というコメントを掲載している。

 カージナルスは30日、CEOとGMの連盟で今回の犯罪はコレア元部長が単独で起こしたものだとし、このようなことが再び起こらないよう徹底するとの声明を出した。

 ESPNだけでなく、他メディアにおいても今回の処分に関しては、犯罪として裁判所が裁いたうえでのものであり、大きな抑止力になるだろうと評価するところが目立つ。

 マネーボール全盛の時代となり、各チームが持つ機密情報はこれまでになく膨大で、その機密性も高くなっている。それだけに不正アクセスによってライバル・チームを出し抜こうという不届き者が二度と出てこなければいいのだが。