カンビンこと菅敏(すが・さとし)です。ユニホームの色をブルーに変えた大谷翔平さんを追いかけ、今年も米国に戻って参りました。パワー全開、スマイル満開の姿をファインダー越しに見られる幸せをかみしめつつ、今シーズンも撮りまくります。このコラムでは、クスッと笑える写真や、旅で起こる楽しいエピソードなどもご紹介しますので、どうぞよろしくお願いします。
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4月5日、ビジターでのシカゴ戦での5回、ドジャース大谷選手が右越えの2号本塁打を放ちました。ネット裏付近で撮影していた私は、ベンチでのセレブレーションを撮り終えるとすぐホームランボール落下地点を目指してダッシュしました。付近のファンに聞くと、打球はスタンドのバーで座っていたカブスファンのナチョスに直撃し、彼が投げ返したと。えっ??投げ返した??そしてそのファンはどこへ?
辺りをキョロキョロ探し回っていると、ビールを両手に席に戻ってきました。シカゴ在中で子供の頃からカブスファンのジム・リッチさん48歳です。どうして投げ返したのかと尋ねると「敵のボールは投げ返すのがホームのファンだ。誰のホームランボールであろうとも」と。しかし大谷翔平の2号ホームランのボールです。価格も相当つくし、価値があるボールです。「お金なんて関係ないよ。ただ、私はカブスファンだからね。ナチョスも床に落ちるし服が汚れたよ」と笑みを浮かべました。横の席に座らせてもらい、その後は彼と話をしながら撮りました。それからの翔平さんは中飛と中直。カブスの鈴木選手は、我々が座っている右スタンド方向に打球を飛ばし、犠飛で追加点。その瞬間、ジムさんは私の方を見つめて笑顔でうなずきました。
別れ際にあいさつをすると「テレビを観てた友だちから連絡がきたよ。日本は今何時かなぁ。日本でもテレビで流れているのかなぁ。とても良い思い出ができた」とニコリ。この試合、カブスの勝利。ファンのジンクスですが、やっぱり野球の神様って本当にいるんですね。とても穏やかで素晴らしいファンでした。【カメラマン・菅敏】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「カンビンの観たい!撮りたい!伝えたい!」)