米大リーグの名門球団レッドソックスが、メジャー挑戦を表明した新日本石油ENEOS・田沢純一投手(22=横浜商大高)獲得へ名乗りを上げた。10日、大久保秀昭監督(39)に、同球団から社会人野球日本選手権(13日~11日間、京セラドーム大阪)を視察する意向の連絡が入った。すでに交渉したブレーブス、マリナーズを含め、10月30日のドラフト後に正式連絡が入ったのはタイガースに続き4球団目。さらにフィリーズ、レンジャーズ、カブス、パイレーツなども興味を示す中、「第2の松坂」獲得へレ軍が本格参戦してきた。

 田沢がホンダとのオープン戦で6回2安打1失点と好投した試合後、大久保監督が「レッドソックスから日本選手権に来るという連絡が入りました」と明かした。初戦は17日の三菱重工神戸戦。視察日時など詳細は不明だが、日本選手権中の接触について「話をする可能性はあります」と認めた。

 レ軍は、エスプタインGMの特命を受けたディーブル極東担当スカウトらを送り込む。今年に入ってからビデオ映像などで田沢の調査を続けてきたが、今大会で最終チェックの場とする方針だ。球団首脳の判断次第では、直後に獲得交渉に突入する。

 現在レ軍の先発投手事情が、田沢獲得への本気度を加速させている。今季は右肩痛で41歳のシリングが開幕から不在で来季のメドも立っていない状況。42歳のウェークフィールドは安定感に欠け、来季の編成で先発ローテ入りが確定しているのは松坂、レスター、ベケットの3人。世界一奪回へ、先発の補強は課題となっている。

 日本のアマチュア選手に対しては異例の即戦力評価を与えており、長期的な育成プランも視野に入れている。入団後は即40人枠に入るメジャー契約を提示する可能性が高く、契約年数も複数年を検討。松坂、岡島の日本人メジャーを獲得したことで、日本人専属トレーナー、通訳などのスタッフも充実している。直接交渉に入れば、初の海外生活となる田沢を公私ともに後方支援できる態勢をアピールする。

 すでに大リーグ公式ホームページでは、ブレーブスが田沢獲得に契約金400万~500万ドル(約4億~5億円)を用意したと報じるなど、田沢争奪戦は激化の一途。ただ大久保監督は以前からチーム選定の条件に、金銭面だけではなく「田沢の1年後、2年後をどう考えるか、今後のビジョンがしっかりある球団です」と繰り返してきた。レ軍は歴史と人気のブランド力に加え、育成面に対しても実績と自信を誇る。

 田沢は日本選手権前最後の実戦登板で、最速147キロをマーク。ホンダ長野には1安打されたが、上々の試運転を終えた。直前の紅白戦では5回4失点で「不安があったけど、まあまあのピッチングができた。これで大丈夫かな」と自信を深めた。

 大会に集中するため自らの報道には無関心だが、米球団が次々と獲得に名乗りを上げる現状には、「評価してもらっていると感じるし、うれしく思う」と話した。東、西地区など希望球団については「よく分からないところがあるし、監督の意見を尊重したい。まだ詰めた話はしていない」と明言を避けた。プロのFA選手の巨人上原、中日川上らメジャー志向の争奪戦も必至だが、田沢の獲得合戦も本格化する。