「♪と~れとれ、ぴ~ちぴち、カニ料理」「♪日本海み・そ」「♪オーマイカラーアサヒペン」。関西人なら思わず口ずさんでしまう作品を生み出した「浪花のモーツァルト」こと、作曲家キダ・タローさんが14日に93歳で亡くなりました。強烈なインパクトがあるキダ作品は、なぜか心に染みます。なぜなのでしょうか?
かつてテレビ番組の企画でキダさんと“共演”し、「太鼓のリズムがけったいやな」と叱られたこともある大阪・道頓堀の名物看板人形「くいだおれ太郎」。同じ名前の「タロー」つながりで、書籍企画などで対談しただけではなく、08年7月に閉店した大阪・道頓堀の食堂「大阪名物くいだおれ」のCMソング「♪ミナミへ行こう、道頓堀へ みんながそろった おいしい広場 道頓堀のくいだおれ」もキダ作品です。
くいだおれ専務取締役で音楽批評家でもある柿木央久(てるひさ)さんは太郎とともにキダさんと何度か会い、キダ音楽の魅力を知る1人です。
「すごいメロディーメーカーでメロディーがきれいで上品。しかもハーモニーをつける編曲がすごく上手です」
斬新なリズムとハーモニー。なぜ心に染みるのか? それは「美しい旋律」にあると指摘します。
「CMソングはポピュラー曲みたいに3分という尺で作るのではなく、15秒とか30秒、せいぜい1分。楽曲としては断片なんですが、キダ先生は断片のところをズバッといく。耳につくというか、いいところを作りはる。本当にどのメロディーも飽きない」
何度も聞くと、飽きがくるはずですが、飽きないのがキダ作品で、いつしか口ずさむことができるようになってしまいます。
柿木さんはキダ音楽の根底にあるのは「上品さ」だと力説します。
「キダ先生はテレビ出てはると、毒舌でナニワのオッチャンみたいな感じですが、人柄はすごく上品な方でした。その人柄は曲作りにも反映されているのかなと思う。曲にいやらしいところがない」
「くいだおれ」閉店の日に駆けつけたキダさんは「くいだおれ」のCMソングについて「自分が経営者になったつもりで『お客さんいらっしゃい』という気持ちで作りました。くいだおれが閉店し、お店と一緒に自分の歌が消えてしまうようで寂しい」と残念そうに話していました。
大丈夫です。「定年退職」した太郎は第2の職場で太鼓をたたいています。イベントに“ゲスト出演”することも多く、ステージに登場する太郎の出囃子(ばやし)は「♪ミナミへ行こう」です。柿木さんは言います。「華やかでにぎやかで、しかも品があって、いいですね。あの曲を聴いて太郎は気合を入れています」。
塗料メーカーのアサヒペン(本社・大阪市)の有名なCMソング「♪オ~マイ・カラーはアサヒペン~」。同社は追悼コメントを寄せました。「アサヒペンのCMでは定番となっている『♪オーマイカラー』を制作いただいたのが1960年頃で、それ以来、半世紀以上にわたって使用させていただいており、当社にとってはかけがえのない財産の1つです。ご冥福を心よりお祈り申し上げます」。 太郎はこうつぶやきます。「キダセンセイ、まだまだセンセイのCMソングは現役でおま」-。【松浦隆司】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)




