「オールド・ルーキー」建さんが史上4人目の歴史をつくる。メッツは26日(日本時間27日)、傘下3Aバファローに所属する高橋建投手(40=前広島)の初昇格を決めた。マウンドに立てばメジャーでも過去3人しかいない40歳以上での遅咲きデビューとなる。しかも「不惑」を迎えてのプレーとなれば、日本人選手では初。27日(同28日)に本拠地ニューヨークで行われるマーリンズ戦から合流し、中継ぎ起用に備えてブルペン待機する。ブルージェイズを戦力外となるなどの苦難を乗り越え、晴れ舞台のスタートラインにたどり着いた。

 マイナーで地道に続けていた好投が、「建さん」を夢舞台に導いた。3Aバファローではすべて救援で6試合、11回2/3を投げて防御率0・77。3試合連続で2回以上のロング救援を含む、最近5試合は失点0だった。腐らず投げて届いた朗報に、高橋は「マイナーで頑張ってきたことが報われて、うれしく喜びを感じている」とコメントした。

 40歳の誕生日はメ軍ホームと同じニューヨーク州でも、3Aの本拠地バファローで迎えた。そして10日後、不惑デビューが決まった。長い歴史を誇るメジャーでも史上4位の高齢初昇格で、60年のオリボ(パイレーツ)以来、49年ぶりの40代ルーキー。日本人最年長でのメジャー挑戦は波乱の連続だった。広島からFA宣言するも有力視されたメジャー契約の声はなく、キャンプ2週間前の2月に入ってブルージェイズに駆け込み移籍。マイナー契約の招待選手として3月1日のオープン戦(対レイズ)で初登板したが、いきなり右ふくらはぎを痛めてリタイアした。ブ軍での登板はこの1試合だけで、同15日にマイナー通告され、同30日に解雇。だが同日、メッツとマイナー契約を結び再スタートを切った。

 広島で長く活躍してきたベテランが、あえて厳しい境遇に身を置いた。家族を広島に残しての単身赴任。英語だらけの慣れない環境もあり「広島でのルーキー時代とは違う。練習メニューも次に何をやるか、いつ終わるかが分からないから気疲れする」と苦労が続いた。右ふくらはぎの故障時には「年かなあ…」とくじけそうにもなった。さまざまな障害を乗り越えてチャンスを待った。

 優勝候補にも挙がるメッツだが、現在は8勝10敗の地区4位と苦戦。この日はナショナルズに1-8で完敗し、5回途中7失点の先発左腕ペレスはローテーションはく奪のピンチに立つ。さらに試合後、高橋と防御率2点台の救援左腕ケイシー・フォッサム(31)を入れ替える荒療治を敢行した。フェリシアーノ(元ソフトバンク)に次ぐ左のNO・2セットアッパーとして、経験豊富な高橋に救世主を託した。「目指してきたのはこの昇格ではない。やっとスタート地点に立てた」。メッツのユニホームに袖を通す10人目の日本人。40歳の挑戦がようやく本番を迎える。