アスレチックスと1年425万ドル(約3億4000万円)で契約した松井秀喜外野手(36)が29日、滞在先のニューヨークから帰国した。大雪のために当初の予定より1日遅れたが、体調も良く余裕の表情を見せた。同地区エンゼルスに移籍し、宣戦布告してきた元同僚・高橋尚成に対し「目をつぶっても打てる」と豪語するなど、来季の活躍を誓った。

 勝負を挑まれたゴジラの口から炎のような言葉が飛び出した。シルバーのコートにシルバーのネクタイ。スーツも同系色のグレーでコーディネートし、輝くファションで成田空港に現れると、さっそく記者会見に臨んだ。松井と入れ替わりでエンゼルス入りした巨人時代の同僚、高橋尚が22日のトークショーで「ベストピッチをすれば、松井さんを抑える確率も高くなる。インコースのサインが出たら投げます」と話したことを伝え聞くと一瞬、目つきが鋭くなった。

 これまで巨人時代の紅白戦や、ヤンキースの一員としてのオープン戦等でイヤというほど打ち込んできた後輩。そんな高橋から宣戦布告されれば、黙ってはいられない。格が違うとばかりに「目をつぶっても打てると思いますけど」とニヤリ。返り討ちを宣言した。

 やはり巨人時代の同僚でオリオールズと再契約した上原についても「絶対抑えたいって言ってるんでしょ。だいたい気合入りすぎるとダメですよ。打たれると思います」。そう断言できるのは現在、両ひざの状態が例年オフに比べ良好だから。松井は「食事した後、椅子から立ち上がる時、楽になりました。ずっと(ひざが)固まった状態だと、動きだす時に結構きついんですけど、最近あまり感じなくなりましたね」と説明した。

 巨人-ヤンキース-エンゼルスと常勝球団のユニホームを身にまとってきた松井。来季は人生で初めて「スモールバジェット(低予算)チーム」の一員として、シーズンに臨む。もうカンセコ、マグワイアの「バッシュ(強打する)・ブラザーズ」を擁し、88~90年と3年連続でWシリーズに進出した、あのア軍ではない。

 予算縮小方針を打ち出すオーナーのもと、ビーンGMがセイバーメトリクス(成績を統計学見地から分析し、選手を評価する手法)を重要視し、選手を集めているだけに、00年以降は5度プレーオフに進出しながら、00年から4年連続で地区シリーズ敗退。ア優勝決定戦にまで進んだ06年も、タイガースに0勝4敗で敗れた。

 シーズンのように試合数が多ければ、統計学的に選手の特徴が表れるが、プレーオフのような短期決戦では、ヤンキースなど圧倒的なタレントを誇るチームに、押し切られてしまうことも多かった。だから09年WシリーズMVPの松井を獲得した。年間を通じての安定感に加え、短期決戦での勝負強さで「低予算球団」を変えられるのか。松井は「ビーンGMからは細かいことは言われてない。とにかく打って欲しいだけじゃないですか」と、意気込んだ。【千葉修宏】