<ナ優勝シリーズ:ブルワーズ6-12カージナルス>◇第6戦◇16日(日本時間17日)◇ミラーパーク

 ブルワーズ斎藤隆投手(41)は、悔し涙で目を腫らし「頂上を取って(仙台に)帰りたかった」と言葉を詰まらせた。5点差で迎えた6回に登板。地区シリーズ第4戦以降は「存在を忘れさせるくらい」封印していたスライダーで、3番プホルスを見逃し三振に仕留めるなど、2回を1安打3奪三振無失点に抑えたが、ワールドシリーズ進出には届かなかった。

 試合後、静まりかえるクラブハウスでぼうぜんとする斎藤にレネキー監督が歩み寄り、労をねぎらった。監督とハグを交わした瞬間、41歳ベテランの両目から熱い涙がこみ上げた。「技術と体力のバランスを保つのが、徐々に難しくなっている。でも、今日やっぱり悔しいんですよ。すごく悔しいんです」。

 3月に故郷・仙台が東日本大震災に見舞われた。さらに度重なるけがに悩まされる中、投手として分岐点となる1年になった。これまでのように引退を考えながら投げるのではなく、その瞬間を楽しみながら投げる意識革命が起きた。その過程で、6、7回という難しいイニングを投げるため、「状況に応じた先発に近い投球スタイル」を身につけるなど、投球の幅が広がった意識もある。自分の中に残された可能性も感じ取った。

 「(頂点を)取りたいですね。自分に時間が残されていれば、可能な限りチャレンジしていきたいと思います」。プロ20年目のシーズンは残念な形で幕を下ろした。だが、心に宿る勝負師としての熱い炎は、まだまだ消えることはない。(ミルウォーキー=佐藤直子通信員)