怒りを押し殺すのに必死だった。広島が25安打19得点と大勝し、15年初勝利を飾った。だが緒方孝市監督(46)は口を真一文字に結び、眉間にはしわが寄っている。拳を握りしめたまま強い口調で話し始めた。物足りない、というレベルではなかった。

 「走塁ね。去年までの教えは当然できるものと考えていた。そこから上をどうやっていこうかと考えていたけど。思っていた以上にひどい、がっかりした。しょうもないミスが多すぎるというかね」

 機動力野球を掲げるには、あまりに悔しい惨状だった。象徴的だったのは9回1死二塁。会沢が二遊間を破る安打を放った場面だ。二塁走者上本は打球を確認し、スタートが遅れて生還できなかった。三遊間の打球で二塁走者がスタートを切り損ねる場面も数多く見られた。その多くが、足で期待する選手たち。自らの指導力不足も責めながら「今の時期だからこのくらいの口調で言えるのかなと思うところはあります」と精いっぱい前を向いた。

 笑顔こそなかったが、ここ2試合で沈黙していた打線は爆発。21日の巨人とのオープン戦で無安打の上、失策を犯し「明日は外します」と厳しい言葉をかけた堂林も暴れた。同点の6回1死二塁。代打で直球を右中間へ運び、決勝の適時三塁打とした。「結果を出し続けるしかない」と堂林。指揮官の厳しさは選手へと伝わり、競争による相乗効果を生んでいるのも確か。出た課題をつぶし進んでいく。勝利の笑顔はまだ先にとっておく。【池本泰尚】