ゴメスが突貫工事だ。阪神マウロ・ゴメス内野手(30)が16日、神宮球場での指名練習に参加し、予定にない打ち込みを行った。開幕まで10日と迫るが、打撃のタイミングが思うように取れていない自覚での行動だ。今日17日のDeNA戦(横浜)は「4番一塁」で出場する予定。主砲が一気に不安を拭い去れるか。注目される。

 主軸を打つ助っ人としては異例の光景だ。オマリー打撃コーチ補佐が打撃投手に歩み寄って“残業”を依頼。悩める主砲が志願しての「おかわりフリー打撃」の状況が整った。ティー打撃、フリー打撃、ノックと17日の出場に備え、ひと通りの練習を終えたゴメス。しかし表情はさえない。「アウトサイドイン…」などと自分で身ぶり手ぶりを交え、同打撃コーチ補佐と話し込んだ。そして志願練習が始まった。

 そこから40スイングし、3本の柵越えを放った。通常のフリー打撃でも51スイングで2本を放っており、合わせて91スイングの振り込みだ。試合のなかったチームは午後2時前から指名練習を行った。鳥谷、マートンらの姿はなかったが、来日遅れと左脇腹の張りなどでペースダウンしているゴメスは首脳陣と話し合い、参加。そこに加えて志願での追加練習だけに本気度が伝わってきた。

 「ここ何日か、自分でしっくりきていない。リズムがよくないと感じている。少し打ち込みたかった。試合でも、これからできるだけ打席に立ちたい」

 実戦復帰となった15日DeNA戦でいきなり適時打。昨季打点王の貫禄をみせつけたばかりだが、詰まりながらも右前に運んだ当たりには納得していなかった。真剣な表情で話すゴメスに関川打撃コーチも「突っ込むというか開くというか、その辺りを感じているのでは」と代弁した。

 「フィーリングの問題かな。数を振らないと。見極めもできているし、少しでも多く立っておいた方がいいんじゃないかな」。和田監督も今後の実戦では1試合4打席は打たせる気配だ。

 来日1年目の昨季、いきなり109打点でタイトルも獲得、主砲としてチームを日本シリーズに導いた男の不振など想像もしたくない。無観客試合を含めてあと6試合となった実戦の機会で快音を響かせ、不安をぬぐえるか。大きなポイントだ。【編集委員・高原寿夫】