阪神岩田稔投手(31)が8回無失点の粘り腰を披露し、2戦連続サヨナラ勝利を呼び込んだ。1回は2死満塁で6番藤井を三ゴロに仕留め、2回は無死三塁から3人斬り。7回2死一、三塁で代打福田を空振り三振に打ち取ると、ガッツポーズが飛び出した。

 「ここでゼロに抑えないと勝ちは入ってこないという気持ちで投げました」

 オフは開幕投手に名乗りをあげた。本命メッセンジャー、対抗藤浪の構図ができあがった中での宣戦布告。冗談ではなかった。「開幕で投げたいと本気で思っていた」。名誉がほしい? ライバルに負けたくない? 違う。救援陣に少しでも長く休んでほしいという純粋な理由があった。

 「1日でも早くマウンドに上がれば、それだけイニングを多く投げられる可能性が高くなるやろ? 単純な話やで」

 結局開幕投手はメッセンジャーに譲ったものの、シーズン初戦は8回7奪三振5安打無失点。「最初から最後まで球速も変わらず、しっかり抑えられた。自分で最初から最後までいくと決めているし、9回もいく気でした。こういう投球を積み重ねていきたい」。7回111球の後も平然とマウンドに上がり、計134球を投げきった。

 直球の重さでバットを押し込み、制球も安定。和田監督も「今日の試合は岩田の試合。なんとか勝たせたかった」と絶賛した内容で、昨季防御率リーグ2位の実力をあらためて証明した。打線の援護に恵まれない登板が例年目立つが、「それは巡り合わせなんで」ときっぱり。初星お預けとなった左腕の表情は最後まで明るかった。【佐井陽介】