猛省の15年初星だ。阪神藤浪晋太郎投手(20)は5回9安打3失点と苦しみながらも、3年目で初のシーズン初登板初勝利を記録した。打線の大量援護に助けられた形となり、白星にも「恥ずかしい」と自戒。次回先発予定の4月5日巨人戦で本来の投球を取り戻す!

 藤浪は何度も右拳を振った。味方の大逆転劇で1点リードを奪った直後の5回だ。1死一、三塁を無失点で切り抜け、感情を荒ぶらせた。苦しんだが故のガッツポーズ連発だった。

 「体の開きが早く、抑えようという気持ちが先行してしまいました」

 不運な幕開けが歯車を狂わせた。1回1死一、三塁、4番ルナをツーシームで三ゴロに仕留めた。注文通りのゲッツーコース。ここで二塁上本の一塁送球に一塁走者森野が右手を伸ばして直撃。まさかの併殺崩れで先制点を献上し、この回5安打3失点を許した。

 「(ルナを)打たせた瞬間、気が緩んでしまった。予想外のプレーで締め直すことができなかった」

 中日は荒木を外してまで先発野手8人のうち6人を両打ちと左打者で固めてきた。繊細に制球しきれずミートされた。2回以降は要所を締めて5回9安打3失点。初星を手にしたものの、笑顔はなかった。

 「5回で勝ちをもらっても仕方がない。むしろ恥ずかしい。勝ちがついても、あまり意味がない」

 キャンプイン前日。詰め替え用がタップリ入ったアロマキャンドルセットを母校大阪桐蔭の野球部寮に届けた。橋本翔太郎コーチ(28)が昨年11月に結婚。高校3年時に1年間指導を受けた先輩に向けた、サプライズ祝いだった。「大したことはしてないですよ」と照れ笑いするが、橋本コーチが「ビックリした。本当に周りを気遣える子」と感激したのは当然だ。

 感謝の心を大事にする。今季の個人目標は180イニング以上。2年間助けてもらった救援陣、打者陣への恩を返す意味もあるだろう。この日は6回続投を志願しながらGOサインをもらえず。救援陣の負担を増やす形となり自戒した。

 「中西さんに行かせてくださいと言ったけど、ダメだと言われた。悔しいというか、任せてもらえなかったので…」。自分自身への怒りにも似た感情は必ず、次回へのエネルギー源となる。【佐井陽介】