連勝が止まっても、虎に待望の1発が飛び出した。西岡剛内野手(30)が、かつての同僚に強烈な1発や。ヤクルト戦(神宮)の1回、ロッテ時代にともに戦った成瀬から先制の1号3ラン。試合は悔しい逆転負けで開幕4連勝はならなかったが、15年虎打線のカギを握るスラッガーが、2年ぶりのアーチを描いた。

 西岡による痛快なしっぺ返しだった。初回無死二、三塁の絶好機。右打席に立った体がヤクルト成瀬の126キロ直球にクルリと回転した。虎党の声に呼び寄せられるように、打球は左翼スタンドに吸い込まれた。うつむき、顔をしかめる成瀬をよそに軽やかにダイヤモンドを1周した。

 西岡 打てば勢いに乗る場面だった。やってやろうという気持ちだった。反応で打てた。

 ロッテ時代からかわいがる後輩との対決。移籍初登板のサウスポーを、先制3ランでセ・リーグに出迎えた。前日3月30日には成瀬から「打ちとりたい」とキーマン指名を受けた。西岡はあえて目の前のプレーに集中。「向こうが勝手に意識しているだけ。だから打たれたんじゃないですか」。レギュラーシーズンでは13年9月26日DeNA戦(甲子園)以来となる本塁打が西岡の答えだった。

 チームの中でも唯一無二の存在。3月21日オリックスとのオープン戦。味方失策が絡んだピンチで、ルーキー石崎が顔を硬直させていた。三塁から歩み寄り、一声かけると石崎の表情が一変し、笑顔になった。「内容は言えないですけれど、僕の気持ちを一瞬で和ませていただいたんです」(石崎)。その行動がチームに大きな影響を与えることを物語っている。だからこそ、自身2年ぶりの1発にも試合後は険しい表情でチームの敗戦をかみしめた。

 西岡 勝たんかったら意味がないんで。

 鮮やかな先制パンチも実らず、逆転負け。西岡も第2打席以降は3度凡退。開幕3連勝でストップしたとあって、次なる目標は明確だ。

 西岡 明日勝つ。

 試合後、クラブハウスへと引き揚げる途中に「西岡いいぞー!」と大きな声援を受けた。1年前の3月31日は…。前日巨人戦の試合中に起きた福留との衝突で、都内病院で再び精密検査と治療を受けているところだった。ちょうど1年後に待望の1発。確かに、オフに球団が獲得に乗り出すことを視野に入れた成瀬に白星を献上してしまったが、西岡の一撃の意味は小さくない。1番鳥谷、2番上本の15年虎打線を際立たせるのは、この男。初回の3点はまさに理想型の先制劇だった。

 背番号7がこの日笑ったのは、本塁打を放った直後だけ。心からの笑顔は勝利の後にとっておく。【松本航】