あと1歩で…。阪神能見篤史投手(35)が痛恨の逆転打を食らい、4年連続でシーズン初登板勝ち星なしとなってしまった。左足先に打球を受けながら力投したが、5回4失点で敗戦投手に。チームも昨年まで4年連続で負け越している苦手の神宮球場で黒星発進となった。

 窮地に立たされた能見は踏ん張れなかった。悪夢を見たのは2点リードの5回だ。2死三塁。田中浩に四球を与え、自ら不利な展開を招いてしまった。打者はこの日、被弾し、二塁打を浴びていた雄平だ。フォークを低めに連投しても見極められた。3球目もフォーク。わずかに浮いて、詰まらせたが、振り抜かれた白球は、無情にも三塁西岡の頭上を越える…。1点差に迫られる適時二塁打を浴びた。

 ピンチは続く。二、三塁で畠山を迎える。初球の外角直球だった。思い切り狙い打たれ、ライナーで中堅大和の頭上を越える…。痛恨の2点適時打で逆転されてしまった。「粘り強く投げきれませんでした。四球が絡んだからね。それで、つながってしまったから。フォークが落ちない。自分で思っているよりも」。今季初登板は5回4失点で降板。11年以来、4年ぶりのシーズン初登板勝利を目指したが、かなわなかった。

 雄平が天敵になってしまった。5回の適時打は、投げる前から追い詰められていた。2回はバックスクリーンにソロアーチを被弾。4回には右中間を破られる二塁打を浴びた。いずれもスライダーを完璧に振り抜かれたものだ。この伏線があるから、やすやすとスライダーを投げられない。速球にも強いタイプ。狙い球を絞りやすい状況に陥り、追い込まれていった。

 頼みの実力派左腕が持ちこたえられず、開幕3連勝でストップ。中西投手コーチも「雄平1人にやられたようなもの。まともにいき過ぎや。時間をかけてゆっくりいかないと…。(攻める)ゾーンを広げていかないとな。(積極的に)ボールを振る打者だから」と渋い表情。速球の球威は回を追うごとに失われ、フォークなど変化球も高かった。初回、3点の援護を生かせず、痛い黒星発進になってしまった。【酒井俊作】

 ▼阪神は06年からの10年間、神宮でのヤクルト戦で47勝50敗2分け3つの負け越し、勝率4割8分5厘と苦戦。甲子園など他球場では73勝41敗2分けで勝率6割4分と圧倒しているため鬼門ぶりは際だつ。11年から14年は4年連続負け越し。