オリックスの中島裕之内野手(32=アスレチックス3A)が、開幕初勝利を呼び込む「移籍1号」を放った。2点を追う6回1死で左中間への反撃ソロ。日本の公式戦では西武時代の12年9月5日ソフトバンク戦以来、938日ぶりの1発だ。これで眠っていた打線が目覚め、2死後に6連打などで8得点のビッグイニング。大型補強した打線の新4番が、開幕からの4連敗をストップさせた。

 まさに火付けの1発だった。6回。中島はソフトバンク武田のスライダーを完璧にとらえた。新設のテラス席を越えて左中間スタンドへ一直線。「流れが悪かったので、きっかけを作りたいなと思っていた。1勝したことで次につながっていくと思う」。1点差に迫ると、2死後に打線がつながり5年ぶりの1イニング8得点。胸のすくような逆転劇を4番が演出した。

 開幕4連敗スタート。それでも中島は「チームの雰囲気はいいよ」と言い続けた。逆境も楽しむ男だ。米国での2年間はメジャー昇格できなかった。渡米直後にマイナーで打撃を変えられた。結果が出なくなった。それもいい経験と笑う。「どこでも楽しくやってたからね。苦しいとも、しんどいとも思わなかった」。

 試合前にはソフトバンク前監督の秋山幸二氏(野球評論家)から、2月キャンプに続いてアドバイスを受けた。秋山氏は「まだ向こうにいる時の悪い癖がついてる。しばらくかかりそう。今日は打たないよ」。それでも中島は“1発回答”。殿堂入りした元スターの予想を超えていった。

 入団直後はオリックスの知識は全然なかった。「入団会見の時に、選手名鑑もらっていいですかと言ったくらいやからね」。それでも明るい性格ですぐとけ込んだ。2月キャンプでは糸井とともに若手を食事に誘うなど、さっそくリーダーシップを発揮していた。

 ブランコがこの日、左膝痛で出場選手登録を抹消された。中島はロッカー室で声をかけたという。「早く戻ってきて一緒にやれるようにしたい。チームがいい状態で戻れば、彼も楽に打席に入れると思うからね」。大型補強した打線の中心的存在。早くもチームの“顔”になりつつある。【大池和幸】