阪神の守護神に君臨する呉昇桓投手(32)が「ヒョン」の意地を見せた。1点リードの9回に登板。先頭雄平に左前打を浴び、雲行きが怪しくなる。2死までこぎ着けるが森岡のボテボテのゴロをファンブル…。同点の走者を二塁に進めてしまった。

 だが、崩れるわけにいかない。この日は自らを慕って、1月にグアムまで自主トレに来た岩本が先発だ。しかも7回1失点の好投。勝利投手の権利を消すわけにいかなかった。中村を左飛に抑え、今季2セーブ目だ。「岩本の勝利がつく、つかないで違ってくる。白星がついて良かった」。ヒョン(韓国語で兄の意味)らしく、不調でも耐えた。

 試合前練習では冗談を飛ばし「弟分」を和ませた。「しっかり投げて、ヒーローインタビューで話すことを考えておけよ」。そう言ったからにはヒョンも必死に踏ん張る。発奮材料はもう1つある。前日3月31日には古巣韓国サムスンの林昌勇(元ヤクルト)が韓国球界通算200セーブを達成。母国の兄貴分の偉業を動画で見届けた。「簡単な数字ではない」と喜んだ。

 開幕3連戦は本調子でなく、この日は初めて藤井とバッテリーを組むなど、首脳陣も復調の手だてを考える。呉昇桓は言う。「今日は運良く抑えられた。いい方向に作れている」。強気な姿勢を崩すことはない。