阪神大和外野手(27)が決勝打で岩本に白星をプレゼントした。0-0の6回2死一、二塁、石山の外角直球をライナーで右中間に運んだ。「ガンちゃん(岩本)が頑張っていたし、打ちたかった。直前の円陣で『外角球が多い』と言われて、センターから逆方向を意識していました」。昨季14打数7安打のお得意様から千金の2点先制打。一気に上昇気流に乗った。

 大切に胸にしまう言葉がある。昨季の甲子園戦だった。メッセンジャーが浴びた飛球にダイビングキャッチを試みて失敗。右翼福留の素早いカバーがなければ、大惨事になってもおかしくなかった。すぐさま一塁ベンチで助っ人に謝罪。「怒っていると思ったのに…」。笑顔でかえされた言葉は今も忘れない。

 「何を言っているんだ。気にするな! オマエにどれだけ助けられたと思っているんだ。これからもドンドン飛びこんでくれ!」

 思い切りを忘れてはいけない。そう心に誓った。

 この日は2点リードの7回無死一塁の中堅守備で強風の中ダイビングキャッチを試み、後逸から二塁打を許した。「取れると思ったら、逆風で最後にストンと落ちた。無理する必要はなかったかもしれない」。反省はするが、チャレンジ精神を捨てるつもりはない。

 昨秋から頭が突っ込み、上体だけでスイングしてしまうフォームの改良を開始。開幕前は生みの苦しみか、深刻な不振に悩んだ。「そこはもう割り切ってゼロにして入りました」。キャンプ中から上本モデルの黒バットを使用しながら、開幕数日前から自身のオレンジバットに戻した。右方向2本で今季初のマルチ安打。トンネルの出口は全力で走り抜けた。【佐井陽介】