伝説の日に虎が惜敗を喫した。4月17日。あの伝説の「バックスクリーン3連発」が生まれた85年以来となる甲子園での阪神巨人戦だったが、あと1歩及ばず、今季巨人戦で3連敗となった。それでも、球団創設80周年企画の「レジェンズデー」第1弾としてランディ・バース氏(61)らが見守った中で浮上への光明もある。主砲マウロ・ゴメス内野手(30)が7試合ぶりの長打。借金は今季最多タイの4に戻ったが、今日18日から逆襲に打ってでるはずや。

 ゴメスは右足に乗せた体重を一気にバットへと伝えた。30年前のこの日、主砲バースが振り抜いたような鋭いスイングだった。3点リードされた4回無死一塁。巨人ポレダの高め直球は148キロを計測したが、振り負けなかった。

 「いい真っすぐを持っているピッチャーなので、ああいう形で打てたのは良かったよ」

 速球とパワーが強烈な打球を生んだ。左翼金城の猛アプローチは届かず、打球はフェンス沿いを転々。一塁走者鳥谷が悠々と生還する適時二塁打。自身7試合ぶりの長打。それなのに様子がおかしい。両手を空に掲げるいつものポーズを封印した。重苦しい雰囲気を一変させる打撃を手放しで喜ぶことはしなかった。

 1回の一塁守備で失態を犯していた。1死一、三塁で飛んできた4番坂本のゴロ。「スピンした緩い球だったので、ホームは難しいと判断してああいう形になってしまったんだ…」。本塁に送球すれば先制点を防げたように見えたタイミングで一塁ベースを踏んだ。そこから3失点…。高代内野守備走塁コーチも「あれはホームや」と言い切った。以降、胸中はモヤモヤに支配されていたのだ。

 試合前のクラブハウスでは大きな勇気を得た。「頑張りなさい」と背中を押す声。史上最強助っ人として猛虎を引っ張ったバース氏だった。大先輩からはこれまでも「85年のカキー(掛布)、岡田、真弓、私のようなホームランバッターは今はゴメスぐらいかな」と期待を受けてきた。みそぎの一打はどでかいホームランではなかった。それでも、バックネット裏に姿を見せたバース氏の笑顔が打点の価値を表していた。

 和田監督は試合前に「3発と言わず、1発見たいな。ゴメスの1発が見たい」と話していた。求められていたのは勝利のための一撃だった。あと1歩届かなかったメモリアルデーの勝利。引き揚げる直前、ゴメスは「負けてしまったのは残念」と首を振った。30年前、虎は伝説の3発で逆転勝利。それ以来の聖地での4・17TG決戦で、逆転勝利とはならなかった。自らの使命は1つ。16時間半後の戦いで仕切り直す。【松本航】

 ◆バックスクリーン3連発 85年4月17日、甲子園での阪神-巨人2回戦。1-3と2点を追う阪神は7回裏、巨人先発の槙原を攻め2死一、二塁とチャンスをつかんだ。ここで3番バースが、初球をバックスクリーン直撃の1号逆転3ラン。4番掛布は、バックスクリーンやや左に本塁打。そして5番岡田もアーチを描き、前代未聞のバックスクリーンへの3者連続本塁打。工藤-福間を継いだ中西がプロ初セーブでこのリードを守り、阪神が6-5で快勝。21年ぶりの優勝に向け、最高の形で弾みをつけた。