勝負を決めるのが4番のバットだ。阪神マウロ・ゴメス内野手(30)が先制打と決勝打をたたき出し、G倒の歓喜を阪神ファンに届けた。巨人先発の19歳田口から初回に3試合連続適時打となる中前打。同点での6回も三遊間を破る勝ち越し打を放ち、勝利に貢献した。チームは11残塁の拙攻で、まさにゴメスさまさま。今日も頼むで~。

 スタンバイするゴメスは目の前の光景に目を疑った。「あまりないことだからビックリしたよ」。同点の6回無死一塁。前を打つ鳥谷がバットを横にした。珍しい犠打で1死二塁。昨季打点王のプライドがフツフツと体内にわき出した。

 「素晴らしいバントで送ってくれた。積極的にいい球が来たらどんどんいこうと思っていたんだ」

 初対戦となった巨人田口の球筋は織り込み済みだった。初回は外角チェンジアップを中前に運び先制適時打。心身共に万全の準備で迎えた2球目だった。外角低め121キロのスライダーに体が前のめりになった。最も遠い位置で捉えても、打球は三遊間を割った。勝ち越し適時打に今季最多4万6438人を集めたマンモスが揺れる。「いい結果が出て良かったよ」。本物のゴメスが帰ってきた。

 4試合連続安打に、3試合連続打点。長く続いた低迷を吹っ切ったのは前カードの中日戦(ナゴヤドーム)だったに違いない。自身は「うまく打てる日もあれば、打てない日もある。(調子は)あんまり意識しないようにしている」と話す。ただ、あの3連戦の試合前練習はいつもと違った。

 ゴメス ルナ! もっと強く振れよ! そんなもんなのか? ほら! 

 名古屋の地で「いじりキャラ」の素顔が復活した。同じドミニカ共和国出身のルナ、エルナンデス、ナニータ。野球で苦しめられた中日ドミニカントリオ、通称「3D」には母国語のスペイン語が通じる。阪神で主に使うのは英語。自然とシャイになる自分は、本来の姿ではない。「ストライク! ストライク!」といじられていた同郷の中日ルイス打撃投手は「同じ場所から来ているからすごく仲がいいんだ。言葉が直接通じる。いじりがひどいよ」と笑う。今オフにはルナと母国の首都サントドミンゴで食事をした。以前にはゴメスの自宅にルナが押しかけたこともある仲。不振脱出に名古屋遠征は最高のリフレッシュだった。

 お立ち台では一転、能見から「明日もゴメスが打ってくれると思うので球場に来てください」といじられた。それは仲間やファンの信頼が戻った証し。ゴメス、完全復活だ。【松本航】

 ▼ゴメスが、4月16日中日戦から3試合連続打点。今季阪神の選手では最長となった。ゴメスは109打点を挙げタイトルを獲得した昨季、3試合以上連続打点を5度記録。最長は4試合連続(2度)。また、ゴメスは15日中日戦から4試合連続安打を継続中。今季10試合を消化した7日DeNA戦時点では2割1分1厘だった打率が、現在は2割9分に上昇。8日DeNA戦以降の9試合で31打数12安打、3割8分7厘と調子を取り戻した。