待ってたで、この1発を。阪神の主砲マウロ・ゴメス内野手(30)が待望の今季初甲子園アーチだ。2点を追う6回に2号2ラン。前回対戦でチームが2安打完封負けを喫した巨人高木勇に強烈アーチを見舞った。自身最長タイの4試合連続打点もマーク。暗い雰囲気を打ち破るのは、この男のバットや。

 ゴメスは打席から数歩進み、左翼ポールへ向かう打球を見つめた。快音とともに湧き上がった歓声は、1度静まった。三塁塁審が右腕を回す。それを合図に今季最多の4万6468人がメガホンをたたき、地響きのような大声援が背番号5に向けられた。0-2で迎えた6回1死一塁。願い通りの同点2ランだった。今季の甲子園第1号は最高の形で生まれた。

 「狙ったわけじゃないけれど、自分の打てる球に対していいスイングで捉えることができたね」

 マウンド上の巨人高木勇には前回の初対戦で3打数無安打1三振。チームも完封負けの屈辱を味わった。リベンジのはずが2度目も打てない。5回まで0行進で、ゴメスも2打席凡退だった。それでも「まだ2回目だから」と苦手意識は持たなかった。「どの球種もいい。ストライクが来たら積極的に打つことを考えていたのさ」。これまでの野球人生、狙い球は絞らずにストライクゾーンに来た球を打ってきた。高木勇が投じたのは意図したものと逆球の内角直球。射程圏内に来た獲物を逃さなかった。

 第2号までの道のりは長かった。3月29日中日戦(京セラドーム大阪)で初本塁打。そこから16試合もノーアーチが続いた。一時は打率も2割1分1厘まで下降。不振の最中には大音量の音楽を流しながら試合前練習に向かうなど、昨季見せたことのない姿があった。遠征先では本隊よりも早く球場入りし、バットを振り込み本調子に近づけた。地道な継続で打率は2割8分8厘にまで戻ってきた。

 「自分のバッティングどうこうじゃなく、チームみんなが打つと勝つ。長いシーズン、こんな試合もあるさ。1日休んで切り替えて、次につなげたい」

 実は昨年も4月19日に甲子園第1号、通算2本目の本塁打を放った。少し遅れてかかったエンジンも、残りが123試合と考えれば何の問題もない。苦杯をなめた巨人には、3戦合計5打点で苦手意識の植え付けに成功。みんなで喜んだ1本は決して空砲ではない。【松本航】

 ▼ゴメスの4試合連続打点は今季初で、14年4月4日ヤクルト戦~8日DeNA戦、9月17日ヤクルト~21日中日戦に並んで自己最長。昨季は全26本中、巨人戦で対戦別最多の6本塁打。今季もこのカード5打点は中日戦と並びカード別最多と、相性の良さを維持している。