三振の“おかわり”は怖くない! 西武中村剛也内野手(31)が3回に逆転の適時打、5回に5戦ぶりの5号ソロでチームを3戦ぶりの勝利に導いた。今季、石毛宏典が保持していた球団三振記録1091を21年ぶりに更新。豪快な長距離砲と表裏一体の記録だが、勝利のため、三振を恐れぬ豪快なスイングを貫き続けることを誓う。

 中村の漆黒のバットは空を切らなかった。真ん中に浮いたスライダーと真芯で衝突した。独特の滞空時間の長い放物線が左中間に吸い込まれた。3ボールから狙い打った。「直球狙いだけど、ちょうどスライダーが浮いてきた。ファウルでもいいつもりで思いっきりホームランを狙った」。中村らしい言葉をつむいだ。

 277本をスタンドにたたき込んできた。その裏で1093回も三振で空を切り続けた。18日のオリックス戦で2三振を喫し、石毛が積み上げた球団三振記録を塗り替えてしまった。長距離砲の宿命とはいえ、三振への恐怖を感じたことはなかったのか-。

 中村 野球を始めてから三振が怖いと思ったことはない。小中高は、ほとんど三振しなかったですしね。プロに入って増えたけど、気にして野球をしたことはない。まぁ、いい記録ではないですけど(笑い)。

 振ることを恐れては自分ではなくなる。かつては「(当てにいって)併殺を打つよりは三振の方がいいでしょう」と自らの走力を客観視して言ったこともある。3回の今季4度目の決勝打も7回の猛打賞となる右前打もバットの先端でギリギリ拾ったもの。「ラッキーが続いた」と笑った。

 瀬戸際の攻防を続け、日本屈指のホームラン打者にのし上がった。日本ハム中田のリーグトップ6本塁打に1本差。一塁を守る大阪桐蔭の後輩の目の前を足取り軽く、駆け抜けた。4番対決という声に「そんな対決あるんですか?」と苦笑し、続けた。

 「高校の後輩だし、ジャパンの4番でもある。今年はハイレベルな(本塁打王の)争いができたらいいですね」。好敵手がいれば、勝負師の魂が騒ぐのか-。「いや、独走の方がいいでしょう」。記者の質問を見事に空振りさせ、中村はニヤリと笑った。【広重竜太郎】