思い描いてた形とは、少し違った。でも、うれしさは想像以上だった。バットを振らずにヒーローになった日本ハム近藤健介捕手(21)のもとに、笑顔の輪ができた。「2ストライクに追い込まれていたので、結果的にはホッとしています。痛かったので、あまり覚えてません。とりあえず一塁に行かないと、と思った」。9回無死満塁。右足への死球で、人生初めて、サヨナラ勝利の主役になった。

 脇役はいない。9回、絶体絶命のピンチを抑えたのは鍵谷。サヨナラへつなげる右前打を放ったのは田中、そして8回に起死回生の同点打を放ったのは岡だ。送りバントを失敗し、2打席連続三振を喫していた自分に、挽回のチャンスが巡ってきた。「打席に送っていただいたことに感謝したいです」。チーム全体で打ちあぐねていたオリックス東明のフォークに、食らいついた。右腕がちぎれそうなほど振り回す、こん身のガッツポーズ。「投手に向かっていくだけだと思いました」。ベンチでは、中田が、レアードが、両手を上げて喜んでいた。

 昨秋、チームは一丸となった。一戦必勝でトーナメントのようなCSに挑み、そして、散った。「ああいう雰囲気で143試合をやりたい」。栗山監督は言い続けてきた。まだ4月。だが、ベンチの空気感は似通っている。同監督は「絶対に勝つんだというのはすごくある。みんなで何とかしようと、必死になってやっている」と確かな手応えを感じている。

 今季初のサヨナラ勝利で同カード4連勝、再び今季最多タイの貯金7。「こういう試合を勢いに変えられればいい」。まだ4月。だが開幕のころよりも、チーム全体がひとまわり大きくなっている。【本間翼】