崖っぷちからはい上がった。試合が始まるまで阪神伊藤隼太外野手(25)の打率は9分1厘。打率1割にも満たない男が広島黒田から今季1号となる2ランを放って見せた。

 「今までミスショットというか、ファウルになっていたのが、今日はしっかり捉えられてしっかり結果についてきた。この2日間、修正してきた。いきなり結果が出てちょっとビックリですね」

 6回無死二塁だった。1ボールから内角へ入ってきた139キロの変化球をフルスイングした。高々と上がった打球は右翼スタンドに吸い込まれた。足取り軽く、ダイヤモンドを1周した。

 21日からのDeNA戦は2戦ともスタメン出場した。7打席に立ったが、わずか1安打。4月に入り2軍戦で13打数5安打と打撃の調子はうなぎ上りだったはずが、パタッと止まった。横浜から帰ると映像で確認した。「自分の理想とギャップがあった」。打席の中の自分に仰天した。

 トップ位置を取るタイミング、さらに構えから理想のかたちからかけ離れていたという。2日間、徹底的に修正に取り組んだ。自分を見つめ直した時間は、スコアボードにHランプを点灯させた。黒田からは3打席連続で安打をマーク。二塁打、内野安打、本塁打。三塁打が出ればサイクル安打達成と、快挙まであと1歩だった。

 和田監督は「内容があって結果も伴っていた。今日をキッカケにしてほしい。状態自体は悪くなかったけど、結果を出せていなかった。今日に関しては、隼太がいいときのスイングができていた」とうなずいた。豪快なスイングが戻ってきた。

 鳴尾浜ではルーキー外野手江越が今か今かと準備を重ねていた。そんなプレッシャーを払いのけた。【宮崎えり子】