詰まっても、野手のいないところに飛べば勝ちなのさ。阪神マット・マートン外野手(33)に、神懸かりな安打製造機ぶりが戻ってきた。1回に先制打のゴメスとアベック打点を決める中前ポテン適時打。ゴメスの激走&激バックで迎えた6回1死三塁でも、二塁後方にポテンと適時打が弾んだ。カード勝ち越しは開幕3連戦以来、9カードぶり。黄金週間の反撃開始だ。

 マートンの目の前に最高の舞台が出来上がった。前進守備を敷く内野の後ろに生まれた大きなヒットゾーン。2点リードで迎えた6回1死三塁だった。

 「打てそうな球になんとか手を出したよ。なかなか芯に当てられるような打撃をさせてもらえなかった。前進守備だったからヒットになってくれたね」

 カウント2-2からの本領発揮だった。脳内の一部にあったのはヤクルト石山の140キロを超える直球。そこで向かってきたのが127キロスライダーだった。一瞬でタイミングを遅らせ、ダウンスイングで右前に落とした。初回の中前適時打に続き、岩田の初勝利を後押しする2打点目のひと振りになった。

 日々の準備がはまった。21日DeNA戦終了時には打率2割5厘まで沈んだマートンだが支えがあった。その1人が試合前のフリー打撃で相手を務める中井打撃投手。繊細な打撃を来日時から知る理解者で自身の番が来ると他の選手よりあえて球速を上げてくれる。体重98キロの巨体が繰り出す最速は110キロ。それをバッターボックスの最も投手寄りに立って打ち返す。同打撃投手は約10メートルの距離を踏まえ「体感速度はすごいことになっていると思う」と笑う。その理由は「マートンは遅い球だと泳いで(前に崩れて)しまうから」。直球への対応があってのバットテクニック。100点満点の発表会は3連勝につながった。こうなればいつもの明るいマートンだ。

 「アー、シンド。ヒサシブリネ、タクサン、ベースラン。シンドイデス」

 お立ち台から流ちょうな日本語で語りかけた。360度を見渡し、喜ぶファンの姿を目に焼きつけた。ゴールデンウイークはここから。「試合があるけれど(家族と)ちょっとでも時間を過ごせたらいいね」と試合後はパパの一面を見せる余裕もできた。イライラの過去とはさようなら。猛虎打線の軸に笑顔の安打製造機が帰ってきた。【松本航】

 ▼ゴメス、マートンの打点そろい踏みは今季6度目で5勝1敗。昨季は30試合あり22勝8敗。通算36試合で27勝9敗、勝率7割5分の好成績だ。