「ミスターゼロ」の快進撃が止まらない。楽天の新守護神松井裕樹投手(19)は勝利を確認すると、大きく広げた両拳を力強く握り締めた。チームの連敗を5でストップして、自身6セーブ目。3月28日に始まった無失点記録は10試合、無安打記録は9回2/3まで伸ばした。それでも松井裕は「勝てたことが一番です。ランナーがいる場面で抑えることが信頼につながる。抑えられて良かった」と、ベテランのように冷静に振り返った。

 3-1の2点リードで迎えた8回裏、2死一、二塁でマウンドに上がった。一打同点の場面でも堂々と腕を振った。初球の124キロスライダーで空振りを奪うと、2球目の高め直球で中飛に打ち取った。9回も味方の失策と四球で2人の走者を出したが、最後は宝刀スライダーで三振に打ち取った。気迫の投球を、大久保監督は「並のピッチャーじゃないね。あれが抑えのエース」と褒めちぎった。

 抑えになってからは、就寝前に必ず音楽を聴くことをルーティンとしている。大原桜子のアルバム「HAPPY」から5曲。試合に向かうバスの中でも同じ5曲を聴いてゲンを担ぐ。どんな場面でも平常心を貫き、自分の投球をするための積み重ねの1つ。マウンドを離れても、ストッパーとしての役割を全うしようと工夫する日々だ。

 試合後、無失点記録について問われると「ハイ。意識してます」とキッパリ答えた。重圧と正面から向き合い、乗り越えていく19歳。その姿には絶対的守護神の風格さえ漂ってきた。【松本岳志】

 ▼楽天松井裕は4月5日ロッテ戦から8試合連続被安打ゼロ。連続イニング無安打を通算9回2/3まで伸ばした。過去の連続イニング無安打は40年亀田(イーグルス)と72年高橋善(東映)が15回をマークしている。松井裕のようにリリーフで無安打を続けた最近の例では、10年ファルケンボーグ(ソフトバンク)の12回、14年呉昇桓(阪神)の10回1/3などがある。