ソフトバンク寺原隼人投手(31)が約1年ぶりに1軍マウンドに帰ってきた。昨年5月に右膝を手術後、初となる1軍マウンドで5回3安打1失点と好投。2番手森が6回に追いつかれ、勝ち星こそ付かなかったが、最速150キロを記録するなど力強い球で復活を強烈に印象づけた。

 勝ち星はつかずとも、表情は充実感に満ちあふれていた。寺原が昨年4月30日オリックス戦以来、370日ぶりのマウンドで快投した。最速150キロの直球を武器に4奪三振。うち3度が3球三振と、強気の投球を貫いた。

 「やっとスタートを切ることができた。最初は緊張したけど、初回をゼロで抑えて楽になった。5回まで投げきることができてよかった。ちゃんと投げられるようになるのか不安もあったけど、最低限の仕事ができてホッとしている」

 昨年5月に手術した右膝の状態は、決して元通りになったわけではない。「水がたまったら抜かなきゃいけないし、具合は日替わり。これからは膝と付き合っていかないといけない」。リハビリ中、自宅で由記夫人や子供の顔を見て、家族の苦しい胸の内を察することもあった。「嫁、子供は僕の知らないところで苦労している。早く結果を残して、ちょっとでも安心させたい」。家族もスタンドから見つめたマウンドに、思いをぶつけた。

 工藤監督は「膝も考慮して5回で代えたが、あれだけの投球をしてくれたから、次もチャンスを与えたい」と話し、6連戦が始まる19日までは中継ぎ起用することを明かした。

 「次は言われたところで投げるだけ」。目指すは10年連続となる白星。寺原のプロ14年目が、幕を開けた。【福岡吉央】